36年かけて全国990町村を訪れた近藤博士


 また、発売10日で10万部という驚異の売り上げを記録した『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(東洋経済新報社)の著者、UCLA助教授で医師の津川友介医師も「同じ日本人であっても、住んでいる場所によって寿命が異なることに注目した研究が、当時行われていたことは興味深い」と話す。

 博士の情熱は、あなたのこれからの人生に大きな影響を与えるはずだ。本記事では、紙幅の関係上、著書の内容をすべてお伝えできないのは残念だが、そのエッセンスをお届けしたいと思う。

 近藤博士が見出した「長寿村・短命村」に共通するルールとは一体どのようなものなのか。

◆白米の大食で早死に

 消化もよく、食物繊維も含まれるため「白米は食べるべき」だとされていた当時、近藤博士は衝撃的な発見をした。

 東北地方の米どころ、とくに秋田県の村では、成人が1日に6~7合という大量の白いご飯を食べる習慣があり、おかずとして、大根やなすのみそ漬けなど塩気があるものを添えていた。これらの村では稲作は盛んだが、畑を作らないので野菜はほとんどない。そのように米を大量に食べ、野菜をとらないという食事を若いときからしている村では、40才頃から脳溢血で倒れる村民が多く、亡くなったり、後遺症を抱える人の割合が高い短命村であった。

 同様に、三重県の南島町(現在の南伊勢町)の漁民集落や須賀利(同・尾鷲市須賀利町)、桂城(同・紀北町)、石川県輪島など白米を大食する地区で短命の傾向が見出されている。

 一方、多くの長寿者がいる村では米をあまり食べていないという傾向に、博士は気づいた。代表的なのは、島根県の隠岐島や鹿児島県の沖永良部島。70才以上の長寿率が通常4%程度のところ、7~8%もあったのだ。沖永良部島での調査で興味深いのは、島内で唯一田んぼを持ち、米を偏食する後蘭(ごらん)集落だけが短命であったことだ。

 厚生労働省と農林水産省は共同で、健康的な食事の指標として「食事バランスガイド」を制定している(2005年)。それによれば、1日に茶碗3~5杯のご飯を食べることが推奨されている。

 しかし、前出の津川医師はこう話す。

「白米の摂取量はできるだけ減らした方がいいことを示すエビデンス(科学的根拠)がいくつも出ています。世界的権威のある英国の医学雑誌に、白米の摂取量が1杯(158g)増えるごとに糖尿病リスクが11%上昇したという結果があるほか、日本人を対象にした研究でも、白米をとればとるほど糖尿病になる可能性が高くなることが明らかになっています」

 ただし、これが玄米であれば違ったはずだ、と津川医師が続ける。

「白米や小麦粉のような精製された白い炭水化物は血糖値を上昇させ、脳卒中や心筋梗塞など動脈硬化による病気のリスクを高めることがさまざまな研究によりわかっています。ただし、玄米や全粒粉などの精製されていない茶色い炭水化物は逆に心筋梗塞、脳卒中、糖尿病などのリスクを低下させると報告されています。1日50gの白米を玄米に置き換えると、糖尿病のリスクが36%下がると推定されています」

 最先端の研究結果を踏まえても、白米の摂取量は減らした方がいい。今から50年以上前に、常識を疑い、警鐘を鳴らしていた博士の研究には驚嘆するばかりだ。

※女性セブン2018年8月23・30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

10月22日、殺人未遂の疑いで東京都練馬区の国家公務員・大津陽一郎容疑者(43)が逮捕された(時事通信フォト/共同通信)
《赤坂ライブハウス刺傷》「2~3日帰らないときもあったみたいだけど…」家族思いの妻子もち自衛官がなぜ”待ち伏せ犯行”…、親族が語る容疑者の人物像とは
NEWSポストセブン
ミセス・若井(左、Xより)との“通い愛”を報じられたNiziUのNINA(右、Instagramより)
《ミセス若井と“通い愛”》「嫌なことや、聞きたくないことも入ってきた」NiziU・NINAが涙ながらに吐露した“苦悩”、前向きに披露した「きっかけになったギター演奏」
NEWSポストセブン
「ラオ・シルク・レジデンス」を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
「華やかさと品の良さが絶妙」愛子さま、淡いラベンダーのワンピにピンクのボレロでフェミニンなコーデ
NEWSポストセブン
クマ被害で亡くなった笹崎勝巳さん(左・撮影/山口比佐夫、右・AFP=時事)
《笹崎勝巳レフェリー追悼》プロレス仲間たちと家族で送った葬儀「奥さんやお子さんも気丈に対応されていました」、クマ襲撃の現場となった温泉施設は営業再開
NEWSポストセブン
役者でタレントの山口良一さん
《笑福亭笑瓶さんらいなくなりリポーターが2人に激減》30年以上続く長寿番組『噂の!東京マガジン』存続危機を乗り越えた“楽屋会議”「全員でBSに行きましょう」
NEWSポストセブン
11月16日にチャリティーイベントを開催した前田健太投手(Instagramより)
《いろんな裏切りもありました…》前田健太投手の妻・早穂夫人が明かした「交渉に同席」、氷室京介、B’z松本孝弘の妻との華麗なる交友関係
NEWSポストセブン
高市早苗氏が首相に就任してから1ヶ月が経過した(時事通信フォト)
高市早苗首相への“女性からの厳しい指摘”に「女性の敵は女性なのか」の議論勃発 日本社会に色濃く残る男尊女卑の風潮が“女性同士の攻撃”に拍車をかける現実
女性セブン
イギリス出身のインフルエンサー、ボニー・ブルー(Instagramより)
《1日で1000人以上と関係を持った》金髪美女インフルエンサーが予告した過激ファンサービス… “唾液の入った大量の小瓶”を配るプランも【オーストラリアで抗議活動】
NEWSポストセブン
日本全国でこれまでにない勢いでクマの出没が増えている
《猟友会にも寄せられるクレーム》罠にかかった凶暴なクマの映像に「歯や爪が悪くなってかわいそう」と…クレームに悩む高齢ベテランハンターの“嘆き”とは
NEWSポストセブン
六代目山口組の司忍組長(時事通信フォト)と稲川会の内堀和也会長
六代目山口組が住吉会最高幹部との盃を「突然中止」か…暴力団や警察関係者に緊張が走った竹内照明若頭の不可解な「2度の稲川会電撃訪問」
NEWSポストセブン
警視庁赤坂署に入る大津陽一郎容疑者(共同通信)
《赤坂・ライブハウス刺傷で現役自衛官逮捕》「妻子を隠して被害女性と“不倫”」「別れたがトラブルない」“チャリ20キロ爆走男” 大津陽一郎容疑者の呆れた供述とあまりに高い計画性
NEWSポストセブン
無銭飲食を繰り返したとして逮捕された台湾出身のインフルエンサーペイ・チャン(34)(Instagramより)
《支払いの代わりに性的サービスを提案》米・美しすぎる台湾出身の“食い逃げ犯”、高級店で無銭飲食を繰り返す 「美食家インフルエンサー」の“手口”【1か月で5回の逮捕】
NEWSポストセブン