昭和六十年七月八日。藤田がブルッキングスから招待した女子高校生らの歓迎会が土浦市内のホテルで開かれた。引率してきたJCの会長、マイケル・モーランの謝辞は出席者の誰もが予想もしない、意表を突くものであった。

「藤田信雄元中尉殿、貴殿の好意と惜しみない心や友情にアメリカ国民を代表して感謝の意を捧げます。さらに私は、貴殿の立派で、また勇敢な行為を讃え、ホワイトハウスに掲揚されていた合衆国国旗を贈ります。ロナルド・レーガン」

 現職大統領のポートレートを掲げ、メッセージを代読したのである。

 メッセージに書かれている通り、米国旗は藤田へ渡すため、「五月一日」にワシントンのホワイトハウスに掲揚されたことを示す証明書付きの星条旗であった。

 藤田の一番の理解者であった「タイム」誌の元記者、エス・チャングが次のように述懐している。

「超大国の大統領がこれほど強い讃辞を個人、しかも旧帝国軍人に与えるなど聞いたことがない」

 彼は過酷な戦時下の苦労があったので、戦後も力強く生きられたのかもしれない。若い人には是非、藤田信雄の生き方を学びとって欲しいと思う。

(文中敬称略)

●くらた こういち/1952年秋田県生まれ。業界紙記者を経て産経新聞社に入社。現在はフリーランスとして活動。著書に『アメリカ本土を爆撃した男 新書版』(毎日ワンズ)などがある。

※SAPIO2018年7・8月号

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