特定の腸内細菌の関与について調べるため、動脈硬化モデルのマウスにバクテロイデス属の2種類の腸内細菌を週5日、10週間投与する動物実験を行なった。すると炎症が抑えられ、動脈硬化の進行が抑制された。その上、血中のサイトカイン類の濃度も低下したのである。
「腸内細菌が動脈硬化を進展させる作用として、3つの理由が考えられます。1つ目は腸内細菌や死んだ細菌が腸から血管に流れ、体内で炎症を起こすというもの。2つ目が腸内細菌が短鎖脂肪酸など様々な物質を作り、それが体内に吸収され、動脈硬化が進むのではないかというもの。そして、3つ目は腸内細菌自身が宿主である人の制御性T細胞などの免疫細胞をコントロールし、炎症を調整していることです」(平田教授)
心筋梗塞患者はトリメチルアミン(TMA)という物質が増加する。この物質は肉や卵を食べたときに腸内細菌が作用して産生されるもので、肝臓で代謝され、TMAになり、心筋梗塞などの原因となる。これら腸内細菌の様々な研究の成果は、心血管疾患などの予防と治療薬開発につながっていく。
●取材・構成/岩城レイ子
※週刊ポスト2018年8月17・24日号