国内

港町・横浜のシンボル、氷川丸に日本の貿易の歴史を学ぶ

氷川丸の一等読書室では、特別パネル展「病院船時代の氷川丸」を開催中(12月2日まで)

 日本を代表する港町の1つ、神奈川県横浜市。日本が近代都市へと発展した背景には、大型船の存在があった。横浜港のシンボルとして、山下公園前に係留されている日本郵船氷川丸(以下、氷川丸)。

 1930年に日本郵船が北米シアトル航路用に建造。太平洋を横断する貨客船として、船齢30年に達するまでに太平洋横断254回。総乗船者数は約2万5000人に上り、喜劇王のチャールズ・チャップリンを乗せたことでも知られている。

 そんな氷川丸は、日本の戦前戦後の変遷を知る存在と、日本郵船歴史博物館広報担当・種田弘美さんは言う。

「かつては外国と行き来する船は文化を象徴する存在でしたので、各国が最高の技術と芸術性を競い合いながら客船づくりにあたっていました。氷川丸もその1つ。戦前は豪華貨客船として活躍していたのです」(種田さん・以下同)

 貨客船とは旅客と荷物を同時に乗せる船舶のこと。開港当初、主な輸出品は生糸で、東北をはじめ各地で作られたものを横浜から船に載せて、海外に輸出していた。

「戦前は氷川丸以外にも、ニューヨーク航路の能登丸や、太平洋の女王と呼ばれた浅間丸、欧州航路の照国丸など多くの船が活躍していましたが、戦争で雷撃などを受け、ほとんどの船が沈没。大型貨客船で残ったのは、戦時中、海軍に徴用され、病院船になっていた氷川丸だけでした」

 終戦直後は、復員輸送や一般人の引き揚げ輸送に従事し、その後、GHQの占領政策の中で国内輸送船として転用されていたが、占領政策の緩和後は、食料や復興物資の運搬のために海外へと不定期で運航。本格的にシアトル航路の貸客船として復活したのは、1953年のことだ。

「氷川丸は1960年に現役を退き、翌年より山下公園前に係留され、2008年に日本郵船氷川丸としてリニューアルオープン。戦前の日本で建造された現存する唯一の貨客船であり、貴重な産業遺産として、2016年に重要文化財に指定されました」

 戦後は、日本が高度経済成長により経済大国へと発展を遂げる中、コンテナ船や自動車専用船、タンカー、石油や石炭、鉄鉱石を運ぶ専用船が日本でも運航されるようになる。

「日本は資源が少ない島国なので、衣食住にまつわる産業に必要な原料の多くを外国から輸入していて、その99.6%が船舶により運ばれています。船舶は私たちの日々の暮らしを支える、重要な存在です」

※女性セブン2018年8月23・30日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

各地でクマの被害が相次いでいる(左/時事通信フォト)
《空腹でもないのに、ただただ人を襲い続けた》“モンスターベア”は捕獲して山へ帰してもまた戻ってくる…止めどない「熊害」の恐怖「顔面の半分を潰され、片目がボロり」
NEWSポストセブン
カニエの元妻で実業家のキム・カーダシアン(EPA=時事)
《金ピカパンツで空港に到着》カニエ・ウエストの妻が「ファッションを超える」アパレルブランド設立、現地報道は「元妻の“攻めすぎ下着”に勝負を挑む可能性」を示唆
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さんの胸キュンワンシーンが話題に(共同通信社)
《真美子さんがウインク》大谷翔平が参加した優勝パレード、舞台裏でカメラマンが目撃していた「仲良し夫婦」のキュンキュンやりとり
NEWSポストセブン
兵庫県宝塚市で親族4人がボーガンで殺傷された事件の発生時、現場周辺は騒然とした(共同通信)
「子どもの頃は1人だった…」「嫌いなのは母」クロスボウ家族殺害の野津英滉被告(28)が心理検査で見せた“家族への執着”、被害者の弟に漏らした「悪かった」の言葉
NEWSポストセブン
理論派として評価されていた桑田真澄二軍監督
《巨人・桑田真澄二軍監督“追放”のなぜ》阿部監督ラストイヤーに“次期監督候補”が退団する「複雑なチーム内力学」 ポスト阿部候補は原辰徳氏、高橋由伸氏、松井秀喜氏の3人に絞られる
週刊ポスト
イギリス出身のインフルエンサーであるボニー・ブルー(本人のインスタグラムより)
“最もクレイジーな乱倫パーティー”を予告した金髪美女インフルエンサー(26)が「卒業旅行中の18歳以上の青少年」を狙いオーストラリアに再上陸か
NEWSポストセブン
大谷翔平選手と妻・真美子さん
「娘さんの足が元気に動いていたの!」大谷翔平・真美子さんファミリーの姿をスタジアムで目撃したファンが「2人ともとても機嫌が良くて…」と明かす
NEWSポストセブン
メキシコの有名美女インフルエンサーが殺人などの罪で起訴された(Instagramより)
《麻薬カルテルの縄張り争いで婚約者を銃殺か》メキシコの有名美女インフルエンサーを米当局が第一級殺人などの罪で起訴、事件現場で「迷彩服を着て何発も発砲し…」
NEWSポストセブン
「手話のまち 東京国際ろう芸術祭」に出席された秋篠宮家の次女・佳子さま(2025年11月6日、撮影/JMPA)
「耳の先まで美しい」佳子さま、アースカラーのブラウンジャケットにブルーのワンピ 耳に光るのは「金継ぎ」のイヤリング
NEWSポストセブン
逮捕された鈴木沙月容疑者
「もうげんかい、ごめんね弱くて」生後3か月の娘を浴槽内でメッタ刺し…“車椅子インフルエンサー”(28)犯行自白2時間前のインスタ投稿「もうSNSは続けることはないかな」
NEWSポストセブン
滋賀県草津市で開催された全国障害者スポーツ大会を訪れた秋篠宮家の次女・佳子さま(共同通信社)
《“透け感ワンピース”は6万9300円》佳子さま着用のミントグリーンの1着に注目集まる 識者は「皇室にコーディネーターのような存在がいるかどうかは分かりません」と解説
NEWSポストセブン
真美子さんのバッグに付けられていたマスコットが話題に(左・中央/時事通信フォト、右・Instagramより)
《大谷翔平の隣で真美子さんが“推し活”か》バッグにぶら下がっていたのは「BTS・Vの大きなぬいぐるみ」か…夫は「3か月前にツーショット」
NEWSポストセブン