否定派には相手に対してのリスペクトに欠けるという人がいるようだが、別に中指立てたわけでも唾を吐いたわけでもないし、いうほど下品だろうか? 上品ではないというだけである。別になんでもかんでも品がなければならないというわけではない。

 ガッツポーズで余計なエネルギーを消費するのは投手として損という意見もある。もしそうだとしても、それは当の本人と監督が判断すればいいことだ。世の中が強制することではない。だいたいああやって緊張を解いたほうが投げやすいなら、必要なエネルギーではないだろうか。

 違う競技に当てはめてガッツポーズを論じるのは野暮だが、現在公開中の『ボルグ・マッケンロー 氷の男炎の男』という映画がある。テニスファンならご存じの通り、マシーンとまでいわれる程の冷静さが個性のビヨン・ボルグと、審判や観客に悪態をつきまくって悪童とあだ名をつけられたマッケンローの、1980年ウィンブルドンでの決勝戦を描いたものだ。まさしく氷と炎のような真逆の個性のぶつかり合いは、その後のテニスブームのきっかけとなった。この作品を見れば、その理由がわかると思う。

 西投手のガッツポーズを通して。個性を尊重することの尊さを改めて考えた。高校野球だからといって、「さわやかさ」「ひたむきさ」を押し付けるのは彼らに失礼である。

 二十年近く前、朝日新聞のスポーツ面で高校野球についての現地取材&エッセーの依頼があり、ほぼ同じ結論を書いたら、便箋十枚にも及ぶ抗議の手紙がきた。「お前には高校野球を見る資格はない」とかなんとか。そこそこ年配の男性で元新聞記者と自己紹介があったが、あの人は派手なガッツポーズを連発する西投手に対しても今回やっぱり憤慨しているのだろうか。

関連キーワード

関連記事

トピックス

長男・泰介君の誕生日祝い
妻と子供3人を失った警察官・大間圭介さん「『純烈』さんに憧れて…」始めたギター弾き語り「後悔のないように生きたい」考え始めた家族の三回忌【能登半島地震から2年】
NEWSポストセブン
古谷敏氏(左)と藤岡弘、氏による二大ヒーロー夢の初対談
【二大ヒーロー夢の初対談】60周年ウルトラマン&55周年仮面ライダー、古谷敏と藤岡弘、が明かす秘話 「それぞれの生みの親が僕たちへ語りかけてくれた言葉が、ここまで導いてくれた」
週刊ポスト
小林ひとみ
結婚したのは“事務所の社長”…元セクシー女優・小林ひとみ(62)が直面した“2児の子育て”と“実際の収入”「背に腹は代えられない」仕事と育児を両立した“怒涛の日々” 
NEWSポストセブン
松田聖子のものまねタレント・Seiko
《ステージ4の大腸がん公表》松田聖子のものまねタレント・Seikoが語った「“余命3か月”を過ぎた現在」…「子供がいたらどんなに良かっただろう」と語る“真意”
NEWSポストセブン
今年5月に芸能界を引退した西内まりや
《西内まりやの意外な現在…》芸能界引退に姉の裁判は「関係なかったのに」と惜しむ声 全SNS削除も、年内に目撃されていた「ファッションイベントでの姿」
NEWSポストセブン
(EPA=時事)
《2025の秋篠宮家・佳子さまは“ビジュ重視”》「クッキリ服」「寝顔騒動」…SNSの中心にいつづけた1年間 紀子さまが望む「彼女らしい生き方」とは
NEWSポストセブン
イギリス出身のお騒がせ女性インフルエンサーであるボニー・ブルー(AFP=時事)
《大胆オフショルの金髪美女が小瓶に唾液をたらり…》世界的お騒がせインフルエンサー(26)が来日する可能性は? ついに編み出した“遠隔ファンサ”の手法
NEWSポストセブン
日本各地に残る性器を祀る祭りを巡っている
《セクハラや研究能力の限界を感じたことも…》“性器崇拝” の“奇祭”を60回以上巡った女性研究者が「沼」に再び引きずり込まれるまで
NEWSポストセブン
初公判は9月9日に大阪地裁で開かれた
「全裸で浴槽の中にしゃがみ…」「拒否ったら鼻の骨を折ります」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が明かした“エグい暴行”「警察が『今しかないよ』と言ってくれて…」
NEWSポストセブン
国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白(左/時事通信フォト)
「あなたは日テレに捨てられたんだよっ!」国分太一の素顔を知る『ガチンコ!』で共演の武道家・大和龍門氏が激白「今の状態で戻っても…」「スパッと見切りを」
NEWSポストセブン
初公判では、証拠取調べにおいて、弁護人はその大半の証拠の取調べに対し不同意としている
《交際相手の乳首と左薬指を切断》「切っても再生するから」「生活保護受けろ」コスプレイヤー・佐藤沙希被告の被害男性が語った“おぞましいほどの恐怖支配”と交際の実態
NEWSポストセブン
2009年8月6日に世田谷区の自宅で亡くなった大原麗子
《私は絶対にやらない》大原麗子さんが孤独な最期を迎えたベッドルーム「女優だから信念を曲げたくない」金銭苦のなかで断り続けた“意外な仕事” 
NEWSポストセブン