周囲の大人が高校生の夢を翻意させてきた例もある。2009年に花巻東(岩手)から、プロ球団を経由せずにメジャーリーグへの挑戦を希望していた現西武・菊池雄星は、家族や学校関係者からの説得を受けてプロ志望届を提出。記者会見の終了後、菊池は目に涙を浮かべた。
西武は、ポスティング制度による今オフのメジャー挑戦を容認したが、菊池の希望が叶うまで、実に9年もの時間を要した。
◆楽天からのラブコール
仮にプロ入りの意向を表明しても、逆指名制度がない現行ドラフトでは、吉田が巨人に入団できるとは限らない。そもそも、「長期的な戦力整備を考えれば、巨人は高卒なら内外野、投手なら即戦力を狙うだろう」(巨人番記者)とみられており、指名されるかも微妙。
一方で「地元・楽天での活躍が見たい」とのファンの声も多く、石井一久GMも「ぜひ東北でプレーして」とラブコールを送った。アマチュア球界の取材歴が長いスポーツジャーナリスト・谷口源太郎氏が語る。
「吉田君が“巨人に行きたい”というのは素直な気持ち。なのに、高校生が夢を語って何が悪いのか。高野連は、こうした発言を許すと“高校野球がプロ予備軍を育てている”ようで都合が悪いのでしょう。そうしたアマ球界の体質を、一刻も早く改めるべきです」
10月25日のドラフト会議に向けて、プロ志望届を提出するか否かの決断に迫られる。吉田の夢が、周囲の大人の思惑やソロバン勘定で潰されることなどあってはならない。
※週刊ポスト2018年9月14日号