冷静に考えてみよう。もし公園で無邪気に遊ぶ女子中学生の輪に、いきなり無関係の大人が乱入してきて、卑猥な言動をしてみたり、中学生らを小バカにする発言をしてみたら……完全に異常な行動で、通報されたり警察に事情をきかれても文句は言えないだろう。ところが、ネットは現実世界ではない。その分、こうした異常な言動は先鋭化、肥大化し、多くの人々に迷惑をかけ傷つける。誰がなぜこのような行為を行うのか……。
Aさんが教えてくれたこうした迷惑ユーザーのアカウントをいくつか調べていくと、実在する人物名や写真を上げたアカウントに紐づけられた、匿名ではない人物にたどり着いた。東北地方出身で都内在住の新社会人の男性・X。そちらのアカウントでは、仕事がきついとか、上司の愚痴、今日食べたラーメン、仲間といった飲み会の話などたわいもないつぶやきが続いていた。そこから推測できたプロフィルを添えて、TikTok動画を晒し上げしていやがらせをしているアカウントユーザーと同一人物なのか、筆者が身分を明かしてDMで問い合わせた所、あっさりと認めただけでなく、電話での取材まで承諾してくれた。
X氏「私が(いやがらせアカウントの)持ち主です。迷惑でしたら止めます。すみません」
──動画を無断で転載し誹謗中傷されています。理由を聞かせてください
X氏「ネットリテラシーの低い若い子たちへの警鐘目的というか、そんなところですね」
──誹謗中傷をする必要性はありますか?
X氏「誹謗中傷というか……それで傷つく人がいるなら謝ります」
──どうやっても悪意しか感じない。訴えられたらどうするのか
X氏「それはやめてください。こちらにも生活があります」
──被害者にも生活もある、未来もあるが
X氏「軽率でした、訴えるとか会社に言うとかやめてほしいです、申し訳ありません」
──あなたはすでに被害者の事を晒し上げ、学校名や居住地まで晒している
X氏「でもそういう情報を上げている方もおかしい。その親の責任もありますよね」
──だからと言ってあなたが情報を晒していい理由はどこにあるのか
X氏「リテラシーの啓発というか……」
まるで話にならないX氏の釈明。謝罪も「訴えないでくれ」という本人の勝手な願望にかかる部分でのみ飛び出すだけで、被害者へ詫びる気持ちは全く感じとれない。取材を受ける、というのも「話すから訴えるな」という意図を筆者も感じたほどだ。顔の見えない立場を悪用し、ネット上で見つけた弱者を徹底的にいたぶるという卑劣さを全く自認していない。本人が言う「リテラシー」云々という言い訳も実に滑稽で、リテラシーを啓発する側であれば、そもそも誹謗中傷などの手段を行う必要性は全くなく、なにしろ自身も「身バレ」するような情報をネットに上げているリテラシーの無さをさらけ出しているのだ。