現実世界ではできないこと──小さな嫌がらせだろうが大きな犯罪行為につながる言動であろうが関係なく、ネット上ではいとも簡単にやってのける人間が後を絶たない。他人の個人情報を悪意あるコメントともに晒し上げしておきながら、自分は身バレしないだろうという卑劣さ。いざバレた時の責任転嫁、おおよそこういった人々は、現実世界でも社会から疎外されているのだろうとも思いたくなるが、そうとも言い切れない。
X氏は普段、都内の準大手建設会社の営業マンとして、一見まっとうに暮らしている。記名顔出しのツイッターやFacebookを見る限りは実に常識的で、いやがらせアカウントの管理人とは思えないが、事実として彼がやってきたことだ。 筆者からの取材の後、X氏は被害者と母親に「謝罪したい」といって泣きながらこう話したという。
「すみません、本当に反省しています。動画を見ていて、若い人たちが楽しそうにやっているのを見て腹が立ったからです。こちらは顔や身バレがないからと思って、ひどいことを言ったり、してしまった。相手が小学生や中学生なら文句も言ってこないし大丈夫だという安心感もあった」(X氏)
もちろん謝罪だけで終わらない。被害が実際に出ていることも理解しており、弁護士を仲介して示談交渉の申し入れを行ってきたという。自身を見えない立場に置いたつもりで、軽い気持ちで弱者をいじめた結果、現実世界では自身の生活を崩壊させかねない事態になっていたX氏。こうした現実があることをわからない、想像できない哀れな人々がまた、今日も人々を傷つけ冷笑するのだ。