国内

元刑事が告白 被疑者の指紋採取で血の気が引いた瞬間

スリで捕まえた犯人が…

 警察の内部事情に詳しい人物、通称・ブラックテリア氏が、関係者の証言から得た警官の日常や刑事の捜査活動などにおける驚くべき真実を明かすシリーズ。今回は、元刑事が体験した取調室での仰天エピソード。

 * * *
「今だったら、確実に処分されてるね」

 元刑事はそう笑いながら、新米の頃の思い出を語ってくれた。

 その元刑事が当時配属されていたのは大規模署の1つだ。警視庁にある102の警察署のうち大規模署は19、署長の階級は警視正だ。他の署は署長の階級が警視のため、大規模署は格上の署ということになる。

 ある日、他の捜査に入っていた先輩刑事が、50代のスリを電車の中で発見、現行犯逮捕してきた。

「その時は、先輩刑事が取調室で逮捕してきた被疑者の弁解録取書という調書を取ってね。これは逮捕後、速やかに行わなければならないものなんだ」

 警察ドラマなどでは「供述調書」という名前しか聞いたことがないが、取り調べで作成される調書には2種類あるという。

「弁解録取書」は“弁録”と呼ばれ、犯人を逮捕したら、犯罪の種類を問わず必ず作成し、逮捕した被疑者に逮捕理由や弁護人を選任できる権利を告げるとともに弁解の機会を与え、その弁解を記録したものになる。もう1つが「被疑者供述調書」であり、これは被疑者の身上や被疑者が語った供述を記録したものだが、検察官に送致するまでに作成することになっている

 スリで捕まった被疑者の男はほとんど弁解らしい弁解もせず、先輩刑事の問いかけにも素直に答え、罪を認めていた。弁録の聴取はスムーズに終わったそうだ。

「何せ毎日、超忙しくて。先輩が弁録を取った後、次の供述調書に入るまで少し時間があるから、その間にお前が指紋を採っとけと言われてね」

 被疑者には写真撮影と指紋採取が行わなければならず、それに対する拒否権は被疑者にない。当時はまだパソコンもスキャナーもない時代のため、指紋採取には黒インクが使われていた。これをべったりと手につけて専用の紙に押し付けていたのだ。

 当然、手のひらは真っ黒になるから、はじめは躊躇する被疑者もいる。中には、自分の指紋が採られることを拒もうとする者もいる。警察のデータに自分の指紋を残したくないのだ。

「ウチの署では新米の刑事が被疑者の指紋を全部採ってから、写真を撮りに行っていたんだ。だからオレが指紋を採ろうとしたんだが…」

 ここで男はまさかの抵抗を見せた。

「手を固く握りしめ、指紋を採らせないようにしたんだよ」

 取り調べ中の態度を見ていて「この男は問題なく素直に従うだろう」、漠然とそう思っていた元刑事は、男の態度に「先輩刑事には素直に従ったくせにオレをなめてるのか、こいつ!」と頭がカッとなった。

「開け、手を開け!」

 そう言って男の手を開かせようと力を入れた。語気がだんだん強くなり、口調も荒くなっていく。それでも男は両手を固く握りしめ、歯をくいしばり、身体中に力を入れて抵抗した。

 大声をあげても一向に手を開こうとしない男の態度に、元刑事の手は傍らにあった先輩刑事の備忘録に伸びていた。

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン