樹木さんはがんが見つかる度、鹿児島のクリニックを訪ねた。放射線療法の一種の「四次元ピンポイント照射療法」を行なう施設だ。

「がん組織に対して放射線を立体的に当てる『三次元照射』に、呼吸によるがんの位置変化を追跡する時間軸を加えたのが『四次元ピンポイント照射』です。がん細胞のみを狙い撃ちし、正常な細胞を傷つけることが少ないため体への負担が軽いとされています。一方、保険適用外のため、1回の治療で150万~250万円ほどする」(医療ジャーナリストの田辺功氏)

 全身30か所にも及ぶ治療を施し、長い時には1か月近く鹿児島に滞在することもあった。だが、毎日の治療は20分程度で、“入院”ではなく近くのホテルに宿泊しての“通院”。クリニックにいるとき以外は、普段通りの時間を過ごした。

「がん治療は、『外科手術』と抗がん剤を使った『薬物療法』、『放射線療法』の3本柱を進行具合などによって組み合わせるのが一般的。

 ですが、患者によっては体力の落ちる手術や、吐き気や全身のだるさ、髪の毛が抜けるといった副作用を伴う抗がん剤治療を避けたいと希望するケースもある。平穏な日常生活を送れないほどのクオリティー・オブ・ライフ(QOL)の低下を懸念する声は少なくありません」(同前)

 がんの根治、あるいは寛解を目指すことは、時に大きな代償を払うことを余儀なくされるのだ。

※週刊ポスト2018年10月5日号

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