先の陛下を含め天皇訪韓がこれまで実現していない理由について、日本の外交および治安当局者たちからは次のように聞いてきた。最大の懸念は韓国訪問の際の安全問題(不祥事)だが、その意味で訪韓が実現する条件は「何らかの不祥事があったとして、その不祥事を起した韓国人が韓国の世論によって非難、孤立させられるような雰囲気が想定されること」だという。
それともう1つ具体的な条件として「南北関係の安定」がある。南北関係が対立・緊張し、北朝鮮について予測不可能な状況が続く限り、日韓関係ひいては日米韓関係を悪化させることを狙った北朝鮮による不測の事態という懸念が残るからだ。
平成時代は来年春で終わる。韓国に強い「思い」を持っておられる明仁天皇だが、これで在位中の訪韓はほぼ不可能になった。しかし陛下は先の「ゆかり発言」などから韓国では親韓派と見られている。そのため韓国の知日派の間では「退位後の韓国訪問はどうだろう?」という声をよく聞く。
韓国では慰安婦問題をはじめこれ見よがしの“反日・愛国パフォーマンス”は相変わらず続いているが、一方で南北関係は改善傾向にある。日本では陛下ご退位後の上皇としての存在のあり方はまだ明らかではないが、陛下の韓国への「思い」からして将来、初の「上皇訪韓」はありうるかもしれない。
ただ近年、韓国で陛下に対する政治的利用が目立つのは気になる。とくにメディアは陛下を“親韓派”と見立て安倍政権批判にしきりに利用している。たとえば今年の日本の8・15終戦記念日式典をめぐる報道でも「日王は深い反省、安倍は今年も反省に触れず」(8月16日付け、中央日報)などという大見出しが躍っている。