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東京五輪に向け普及が進む ゆったり快適ジャパンタクシー

「ジャパンタクシー」を開発したトヨタ自動車の粥川宏さん(撮影/小松士郎)

 最近、街中で深藍色に統一された、ちょっと背高のタクシーをよく見かけるようになった。「JPN TAXI(ジャパンタクシー)」だ。2017年10月発売のトヨタのタクシー車両で、現在、東京では法人タクシー全体の約1割を占める。2年後の東京オリンピック・パラリンピックでは、“ニッポンのタクシー”として、世界から観客を迎える。

「この間、杖をつかれた高齢のご婦人を病院までお乗せしたんです。そうしたら、『あら、足元が低いし手すりも大きくて、よっこいしょって乗り込まなくていいのね』と。走り出してからも、『この座席の本当のよさは、足の悪い人間じゃないとわからないと思うわ』と感心しきりでした」

 たまたま乗り合わせたジャパンタクシーの運転手さんに乗客の反応を聞くと、そんな答えが返ってきた。「電動スライドドアも好評で、一戸建ての家なら玄関先にビタッとつけられたりして、雨の日は、お客様が傘をささずに乗り降りできたりもするんですよ」。

 ジャパンタクシーの最大の特徴は、乗る人を選ばない、ユニバーサルデザインタクシー(高齢者・障がい者のほか、妊産婦や子供連れの人等、さまざまな人が利用しやすいことを目指したタクシーで、国土交通省が平成24年3月に認定制度を創設)の認定基準をクリアした広々とした後席空間。

 車いすのままでも乗り込め、ベビーカーや大型のスーツケースとともに大人2人がゆったりと座れる。また、大きな電動スライドドアの乗り込み口は地上32cmと低床で、子供から足腰の弱った高齢者、障がい者も乗降がしやすい構造になっている。

 そして、「足の悪い人間でないと、本当のよさがわからない」と言わしめた座席については、厚みのあるクッションを採用。少し座面の角度を傾斜させることで上体の安定を確保、体が揺すられる不安と不快感を徹底的に低減している。

 さすが、オリンピック仕様!と思いきや、「ジャパンタクシーの開発が正式に決定したのは2012年。

 当時はまだ、オリンピックの“オ”の字も出ていなかったんです」とは、ジャパンタクシーの開発責任者であるトヨタ自動車TC製品企画の粥川宏さん。

「日本の法人タクシーの普及車両は、1936年にトヨタ初の量産乗用車“トヨダAA型”が採用されて以来、弊社が開発を担ってきた経緯があります。そんな中、超高齢化社会を視野に入れた、どなたでも安心・安全に乗っていただける、バリアフリーの車両開発に着手すべき時期ではないかと。オリンピックは格好の追い風となりました」(粥川さん)

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