協会内で孤立が進んだことが、電撃引退会見の背景にあるのは間違いない。ただ、この急展開に焦ったのは貴乃花親方だけではなく、協会執行部サイドも同じだった。
7月の理事会での「一門への所属」を求める決定は、6月に一門を解消したばかりの貴乃花親方と阿武松グループを分断する強烈な“張り手”に見えるが、「引退は協会にとって計算違いだった」(元親方)とみられている。
「執行部としては、貴乃花親方の首に鈴を付けて、一門の枠組みに押し込めたいという意図だったと思う。しかし、追い出すつもりまではなかった。9月27日の理事会では、新たに一門に所属する親方衆の申し出を承認したうえで、無所属のままの親方の行き先を調整するつもりだったはず。“即引退”という玉砕に打って出るとは思っていなかった」(同前)
協会側が“貴乃花追放”まで考えていなかったのは、単に世論の反発を恐れたからではない。貴乃花親方の手元には、協会の暗部をえぐる“爆弾”があるとみられているからだ。
◆陰のスポンサー
「貴乃花部屋は、協会スキャンダルの“ネタ元”になる元職員を複数、囲っている。体制が変わったときに確執が生じて協会から放逐された金庫番といわれた元幹部職員や“女帝”と恐れられた女性職員などを雇い入れてきた。それにより、協会の機密文書の内容やカネの動きなどの裏事情をほとんど把握している。
国技館の改修工事業者の決定をはじめ、メインバンク選び、自動販売機の設置から売店の納入業者の選定まで、細かなものも含めて協会周辺には“利権”になり得るものが数多ある。新たな告発のネタには事欠かないはずだ」(同前)