オレは芸術というのは「発明品」だと思ってるんだけど、ようは妄想でひとつの人生や世界を創り出すわけだから。だから一個一個の歌を、もっと大事にしないと、と思う。だって自分の作った曲に、自分が影響されて、今の自分になっている、というのもあるわけだから。

 そして発明というのは、常に個人的作業なんだよな。集団じゃない。さだの場合は、その「個人」が徹底している。たとえば『防人の詩』で、右翼だなんだって叩かれたけど、あれはそういう歌じゃない。

 たいそうな歌詞だから誤解されるんだろうけど、実に個人的なため息だな。「個人的なため息」だから、皆でシングアウトできない。皆で合唱したら、右翼的なナショナリズムに繋がっていくけど、あんなため息、歌えないだろ?

 あの歌を聴いた後で残るのは、さだ個人の感覚なんだよね。「個人の感覚」というのは、その人しか生み出せない。だから発明。きっとさ、『防人の詩』だって断れなくて作ったんだと思うぜ。でも映画のテーマ曲を歌ってるようで、映画にすり寄っていない。

 オレはリドリー・スコット監督の『ブレードランナー』という映画が好きで、続編の『ブレードランナー2049』も観に行った。でもさ、これがスッキリしないのよ(笑)。さだまさしの映画を観てるのと同じくらいスッキリしない(笑)。

 ようはこの映画も、リドリー・スコットの「個人的なため息」なんだな。SF映画として観るからスッキリしないんであって、「個人的なため息」と思えば、わかる。ただ、こういう「個人的なため息」に100億円以上かけてンだろ? 日本じゃ企画が通らないだろうね。

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