何が言いたいかって、人を揺さぶるものは、それが何であれ、「個人的なため息」なんだよ。さだはそれをずっとやってンだよ。『案山子』もそうだよ。ドキュメンタリーじゃないだろ? あんなヤツが近くにいてさ、「寂しかないか」「お金はあるか」ってしつこく聞かれたら、「うっせーな、コノヤロウ」ってなるよ(笑)。オレのセオリーにはない。でもだからこそ、「さだはすげぇな」と思う。
時代にすり寄った作品には何にも感じないが、「個人的なため息」っていうのは、個人である分、思いが強い。だから、「金頼む、なんてオレは親に電話しねぇぞ」って思うけれど、親になかなか連絡しないというのは、どこかで思い当たる。「ああ、オレ、親に冷たくしてるかな」とか思ってしまうんだろうね。痛いところを突いている。これが「作家」なんだろうね。
※さだまさしとゆかいな仲間たち・著/『うらさだ』より