中国最大の検索エンジン・百度が十数億円を投じて買収したことで話題になったpopInは、中国からの留学生・程涛さんが東京大学大学院時代に起業したIT系ベンチャー企業だ。
程さんは同社の代表であり、3人の子供を持つ父親でもある。彼は日頃から、子供の世界観を日常生活の中で広げる手段はないかと考えていた。そんな時、目についたのが子供部屋に貼ってあった「ひらがな表」や「日本地図」といった学習ポスターだった。
「このポスターのように、普段から身近な存在としてそこにあり、目にするうちに知識が得られて世界観が広がったら」
そう考えて真っ先に頭に浮かんだのが、プロジェクターだった。しかし、スクリーンや壁に映像を映し出すプロジェクターを部屋に設置するには、場所や電源供給を確保する必要がある。
長い電源コードが部屋を横切ることになれば邪魔になり、結局はあまり使われなくなるだろう。
「部屋の中で常設しても配線に困らず、電源も確保する方法はないものか…」
ふと天井を見上げると、そこにヒントがあった。それはシーリングライトだった。「引掛シーリング」と呼ばれる、リビングや寝室の天井に設置されているシーリングライト専用のコンセントから電源をとれば、プロジェクターを吊るせて、給電もできる。コードも本体も邪魔になることはない。
しかし、1つしかない差し込み口からシーリングライトとプロジェクター両方の電源をとることはできない。だったら、この2つを1つにすればいい。
着手から半年後、シーリングライト一体型プロジェクターの試作機が完成した。「ひらがな表」や「世界のふしぎ」など、子供の好奇心を刺激するコンテンツを搭載。これらを寝室で就寝前に見ても、安眠の妨げにならない明るさにこだわった。また、インターネットを介し、ニュースやYouTubeなども楽しめる。高音質が楽しめるスピーカーも搭載した。
資金集めにはクラウドファンディングを利用した。2017年12月から資金提供を募ったところ、わずか3か月で7400万円以上の支援金額を達成することができた。
また同じくして、長野県安曇野市にあるPCメーカー・VAIOに生産サポートを依頼した。ところがVAIOからは、「発売までの期間が短かすぎて協力は難しい」と断られてしまった。程さんは、集めた資金は信頼できると見込んだメーカーに託したいと考えていた。以前からVAIOの技術力や機能美に惚れ込んでいたため、何度も足を運び、ついに承諾を勝ち取った。
そして今年4月、『popIn Aladdin』の先行予約販売を開始したところ、即4200台を突破した。
製品名には、「いろいろなものを実現する魔法」の意味が込められている。このプロジェクターで育った子供の中に、いつしか第二の程さんのような、夢を実現する力を爆発させる子が現れることだろう。
※女性セブン2018年10月18日号