「一番困ったのがガスです。腸が動くとそれだけでストーマから“プルプル”と空気が漏れるような音がして、時には“ブーッ”と普通のオナラと同じくらいの音が出てしまうこともあります。
なるべくガスを溜めないよう、よく噛んで食べるようになりましたし、炭酸飲料も飲みません。お酒は嗜みますが、大好きだったビールは諦めました」(同前)
排泄物の臭いを気にしてにんにくやねぎなどの食材を避ける人もいる。ただ、最近のパウチにはフィルター機能つきで、臭い漏れを防ぐタイプが登場し、パウチ内に数滴垂らすことで臭いを分解する薬剤もある。
高野さんは、事務員の仕事を続けている。服を着れば見た目は周囲の人と変わりない。オストメイト用の便器があるバリアフリートイレも普及し、社会の理解も進みつつある──。
医療の発展とともに「人工臓器」は幅広く使われていくだろう。体の機能を人工物で代替することが日常になる未来では、病気との向き合い方も、大きく変わってくるのかもしれない。
小倉氏は「東京五輪までは番組に関わりたい」とキャスターを続けることに意欲を見せてきた。一般の人よりはるかにハードな“職場復帰”だけに少なからぬ不便も伴うだろう。ただ、その姿がオストメイトにとって大きな希望となる可能性は、たしかにある。
※週刊ポスト2018年11月23日号