国内

防カビ剤や除草剤に注意、日本は世界の流れに反し規制緩和

国内での使用は禁止されているのに輸入は認可している成分

 輸入された農作物には、国内では使用されていない有害な農薬が使われるケースもある。 アメリカから輸入されるレモンやオレンジ、グレープフルーツなどの柑橘類に使用される「防カビ剤」がそれだ。収穫した後に使われる、いわゆる「ポストハーベスト農薬」といわれ、アメリカから日本まで海上輸送をする際、カビの発生を防ぐために散布される。

 食品の輸入事情に詳しい東京大学大学院国際環境経済学教授の鈴木宜弘さんはこう語る。

「アメリカで使用される防カビ剤は、イマザリル、チアベンダゾール、オルトフェニルフェノールなど。いずれも毒性が強く、吐き気や発がんといった人体への悪影響が指摘されます。日本では、それらの農薬は消費者の健康を考慮して使用されることはまずないのに、現実にはイマザリルなどの防カビ剤に汚染された輸入柑橘類が平然と店頭に並んでいます」

 なぜそんなことがまかり通るのか。

「イマザリルなどの防カビ剤は、アメリカでワックスに混ぜられて柑橘類の表面に糊塗されます。ところがそれらの農薬は、日本に輸入される際に『食品添加物』として分類されることになり、なぜか、“制限されている『農薬』ではない”という建前になり、流通が認められています」(鈴木さん)

 つまり、本来は「農薬」であるものが、輸入食品の「食品添加物」として扱われることにより、規制をすり抜けるというわけだ。

 このダブル・スタンダードの背景には、1970年代に勃発した「日米レモン戦争」がある。 当時、日本に輸出する米国産レモンにはポストハーベスト農薬として、日本で未許可の防カビ剤が使われていた。そこで日本がレモンの輸入に難色を示すとアメリカ政府が激怒して、日本からの自動車の輸入制限をするなどの圧力をかけてきた。

「困った日本は、防カビ剤を食品添加物として認可する苦肉の策を打ち出しました。日本の食品安全行政はアメリカの外圧に屈し、国民の健康を守るという義務を放棄していまったのです」(鈴木さん)

 その結果、農薬にまみれた柑橘類が日本に氾濫することになった。問題となっているのは農薬だけではない。

「『ラウンドアップ』という除草剤は、WHO(世界保健機関)が発がん性を認めています。米カリフォルニア州では数年にわたってラウンドアップを使用してがんを発症したという男性が裁判に訴え、製造元のモンサント社に約320億円の賠償を命じる判決が出ました。

 日本では草にしかかけない“除草剤”なのに、アメリカでは大豆やトウモロコシなど穀物に直接かける方法が盛んで、成分が作物に残留しやすい。そのトウモロコシや大豆を世界で最も輸入しているのは日本です」(鈴木さん)

 発がん性が問題視されるラウンドアップは、EUや米カルフォルニア州など各国で使用禁止の規制が進んでいる。

「ところが日本は世界の流れに逆行し、昨年12月に厚労省がラウンドアップの残留基準を、品目によっては100倍以上に緩和しました。防カビ剤と同じく、アメリカの圧力に屈したのではないかといわれています」(鈴木さん)

※女性セブン2018年11月29日・12月6日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

大谷が購入したハワイの別荘の広告が消えた(共同通信)
【スクープ】大谷翔平「25億円ハワイ別荘」HPから本人が消えた! 今年夏完成予定の工期は大幅な遅れ…今年1月には「真美子さん写真流出騒動」も
NEWSポストセブン
フランクリン・D・ルーズベルト元大統領(写真中央)
【佐藤優氏×片山杜秀氏・知の巨人対談「昭和100年史」】戦後の日米関係を形作った「占領軍による統治」と「安保闘争」を振り返る
NEWSポストセブン
運転席に座る広末涼子容疑者
《追突事故から4ヶ月》広末涼子(45)撮影中だった「復帰主演映画」の共演者が困惑「降板か代役か、今も結論が出ていない…」
NEWSポストセブン
江夏豊氏(右)と工藤公康氏のサウスポー師弟対談(撮影/藤岡雅樹)
《サウスポー師弟対談》江夏豊氏×工藤公康氏「坊やと初めて会ったのはいつやった?」「『坊や』と呼ぶのは江夏さんだけですよ」…現役時代のキャンプでは工藤氏が“起床係”を担当
週刊ポスト
殺害された二コーリさん(Facebookより)
《湖の底から15歳少女の遺体発見》両腕両脚が切断、背中には麻薬・武装組織の頭文字“PCC”が刻まれ…身柄を確保された“意外な犯人”【ブラジル・サンパウロ州】
NEWSポストセブン
山本由伸の自宅で強盗未遂事件があったと報じられた(左は共同、右はbackgrid/アフロ)
「31億円豪邸の窓ガラスが破壊され…」山本由伸の自宅で強盗未遂事件、昨年11月には付近で「彼女とツーショット報道」も
NEWSポストセブン
佳子さまも被害にあった「ディープフェイク」問題(時事通信フォト)
《佳子さまも標的にされる“ディープフェイク動画”》各国では対策が強化されるなか、日本国内では直接取り締まる法律がない現状 宮内庁に問う「どう対応するのか」
週刊ポスト
『あんぱん』の「朝田三姉妹」を起用するCMが激増
今田美桜、河合優実、原菜乃華『あんぱん』朝田三姉妹が席巻中 CM界の優等生として活躍する朝ドラヒロインたち
女性セブン
別府港が津波に見舞われる中、尾畠さんは待機中だ
「要請あれば、すぐ行く」別府湾で清掃活動を続ける“スーパーボランティア”尾畠春夫さん(85)に直撃 《日本列島に津波警報が発令》
NEWSポストセブン
モンゴルを公式訪問された天皇皇后両陛下(2025年7月16日、撮影/横田紋子)
《モンゴルご訪問で魅了》皇后雅子さま、「民族衣装風のジャケット」や「”桜色”のセットアップ」など装いに見る“細やかなお気遣い”
大谷家の別荘が問題に直面している(写真/AFLO)
大谷翔平も購入したハワイ豪華リゾートビジネスが問題に直面 14区画中8区画が売れ残り、建設予定地はまるで荒野のような状態 トランプ大統領の影響も
女性セブン
休場が続く横綱・豊昇龍
「3場所で金星8個配給…」それでも横綱・豊昇龍に相撲協会が引退勧告できない複雑な事情 やくみつる氏は「“大豊時代”は、ちょっとイメージしづらい」
週刊ポスト