さらに、自分の人的補償で移籍した選手が活躍でもしようものなら、もう針の筵だ。
様々なかたちで辛酸を舐めた広澤氏は、FA移籍の際に、当時ヤクルト監督だった野村克也氏から「巨人の体質を考えたら行かないほうがいい」と反対されたという。成績の上では的中した“ノムさんの予言”について今、どう思うかを聞くと、こんな言い方をした。
「たしかに、巨人での5年間はつらかったですよ。重圧だけじゃなく、死球による骨折もあって試合に全く出られない時期も長かった。ただ、野村監督の言う通りにヤクルトに残っていても、それはそれで後悔が残ったと思うんです。どちらにせよ後悔が残るなら、FAしての後悔を選んだ。
その結果、しんどい思いをしたけど、違うチームでプレーしたことで、野球の本質が見えてきたところもあります。もし残留していたら、ヤクルト生え抜きとしての実績にあぐらをかいて“もっと野球を勉強しよう”というモチベーションは湧かなかったでしょう。
現役選手のキャリアとして見れば失ったものは少なくない。でも、FAして勉強できたことも多い。そこで得た知識は解説者や指導者として大いに役立っているから、今は自信を持っています」
大物選手の大転換点となる「FA移籍」は様々なドラマを生む。浅村栄斗(28、西武)や丸には、どんな運命が待ち受けているのだろうか。
※週刊ポスト2018年12月7日号