ビジネス

高額報酬ワンマン社長がいる会社の「平均年収」の出し方

年収格差の大きい企業の平均値は「算術平均」では意味がない

 高額報酬の過少申告容疑で逮捕された日産自動車のカルロス・ゴーン前会長ほどでないにせよ、中小企業でも経営トップや役員が給与を貰いすぎて、「平均年収」を引き上げているケースはあるだろう。平均にもいろいろある。本当に知りたい平均値を出すにはどうしたらいいのか。ニッセイ基礎研究所・上席研究員の篠原拓也氏が解説する。

 * * *
 自然科学でも社会科学でも、データをあれこれと加工して、そこから仮説や命題を裏付けたり否定したりするような結果を導く。こうしたデータの加工のうち、頻繁に行われるのが、「平均をとる」という作業である。

 通常、平均は、データを抽出した元の集団の傾向を表すものと考えられている。このため、確率論や統計学では、平均に関する定理が多く、その考察が欠かせないものとなる。

 平均は、小学校の算数で割り算をマスターした後に、高学年くらいから身につけるものだ。各データの値を足し算した結果を、データの個数で割り算して、平均が計算される。たとえば、ある学校のクラスで生徒の平均身長を求めるには、各生徒の身長の合計を生徒の人数で割ればよい。これは、「算術平均」と呼ばれる。もっとも単純で、わかりやすい平均である。

 しかし、算術平均が役に立たない場合もある。たとえば、ある高級青果物店では、リンゴを1個400円、ミカンを1個100円で売っているとする。ある日、この店でリンゴが200個、ミカンが600個売れたとする。リンゴとミカンをあわせてみたときの、平均単価はいくらだろうか。

 この場合、2つの単価の算術平均である250円〈=(400+100)÷2〉には、意味がない。平均単価を求めるには、合計の売上高を、合計の売上個数で割り算する必要がある。売上高は、リンゴ8万円、ミカン6万円で、合計14万円。これを合計の売上個数800個で割り算した、175円が平均単価となる。これは、「加重平均」と呼ばれる。

 また、成長率や伸び率など、物事の変化を表す率の平均には、別のものが必要になる。預金の利率で考えてみよう。

 預金の利率は、複利で表すと扱いやすい。これは、最初に預けた元本と前年度までの利息の合計に対して当年度の利息が付く、という利殖の仕組みを反映した数値だ。ある銀行の外貨預金で、利率が1年目は10%、2年目は2%と、大きく変化したとしよう。このとき、2年間の平均利率は、いくらだろうか。

 算術平均の6%ではない。元本として100万円を預けた場合で考えてみよう。1年後には、元本に10%の利子がついて110万円となった。2年後には、この110万円に2%の利子がついて、112万2000円に増加した。つまり、2年間で1.122倍に増えたわけだ。1年間でみると、1.122の平方根をとって、1.059倍ほどに増えることを意味する。つまり、平均利率は約5.9%となる。これは、「幾何平均」と呼ばれる。

 つぎに、速さや濃度や圧力といった、何かを何かで割り算して得られる比について、平均を求めることを考えてみよう。ここでは、小学生向けの時間・距離・速さの問題が有名だ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

永野芽郁の近影が目撃された(2025年10月)
《プラダのデニムパンツでお揃いコーデ》「男性のほうがウマが合う」永野芽郁が和風パスタ店でじゃれあった“イケメン元マネージャー”と深い信頼関係を築いたワケ
NEWSポストセブン
多くの外国人観光客などが渋谷のハロウィンを楽しんだ
《渋谷ハロウィン2025》「大麻の匂いがして……」土砂降り&厳戒態勢で“地下”や“クラブ”がホットスポット化、大通りは“ボヤ騒ぎ”で一時騒然
NEWSポストセブン
声優高槻かなこ。舞台や歌唱、配信など多岐にわたる活躍を見せる
【独占告白】声優・高槻かなこが語る「インド人との国際結婚」の真相 SNS上での「デマ情報拡散」や見知らぬ“足跡”に恐怖
NEWSポストセブン
人気キャラが出現するなど盛り上がりを見せたが、消防車が出動の場面も
渋谷のクラブで「いつでも女の子に(クスリ)混ぜますよ」と…警察の本気警備に“センター街離れ”で路上からクラブへ《渋谷ハロウィン2025ルポ》
NEWSポストセブン
クマによる被害
「走って逃げたら追い越され、正面から顔を…」「頭の肉が裂け頭蓋骨が見えた」北秋田市でクマに襲われた男性(68)が明かした被害の一部始終《考え方を変えないと被害は増える》
NEWSポストセブン
園遊会に出席された愛子さまと佳子さま(時事通信フォト/JMPA)
「ルール違反では?」と危惧する声も…愛子さまと佳子さまの“赤色セットアップ”が物議、皇室ジャーナリストが語る“お召し物の色ルール”実情
NEWSポストセブン
(時事通信フォト)
「日本ではあまりパートナーは目立たない方がいい」高市早苗総理の夫婦の在り方、夫・山本拓氏は“ステルス旦那”発言 「帰ってきたら掃除をして入浴介助」総理が担う介護の壮絶な状況 
女性セブン
9月に開催した“全英バスツアー”の舞台裏を公開(インスタグラムより)
「車内で謎の上下運動」「大きく舌を出してストローを」“タダで行為できます”金髪美女インフルエンサーが公開した映像に意味深シーン
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる(クマの画像はサンプルです/2023年秋田県でクマに襲われ負傷した男性)
《コォーってすごい声を出して頭をかじってくる》住宅地に出没するツキノワグマの恐怖「顔面を集中的に狙う」「1日6人を無差別に襲撃」熊の“おとなしくて怖がり”説はすでに崩壊
NEWSポストセブン
「原点回帰」しつつある中川安奈・フリーアナ(本人のInstagramより)
《腰を突き出すトレーニング動画も…》中川安奈アナ、原点回帰の“けしからんインスタ投稿”で復活気配、NHK退社後の活躍のカギを握る“ラテン系のオープンなノリ”
NEWSポストセブン
真美子さんが完走した「母としてのシーズン」
《真美子さんの献身》「愛車で大谷翔平を送迎」奥様会でもお酒を断り…愛娘の子育てと夫のサポートを完遂した「母としての配慮」
NEWSポストセブン
11歳年上の交際相手に殺害されたとされるチャンタール・バダルさん(21)千葉県の工場でアルバイトをしていた
「肌が綺麗で、年齢より若く見える子」ホテルで交際相手の11歳年下ネパール留学生を殺害した浅香真美容疑者(32)は実家住みで夜勤アルバイト「元公務員の父と温厚な母と立派な家」
NEWSポストセブン