ライフ

ダウン症の子を持つ奥山佳恵「わが子に障害あると知った時」

女優の奥山佳恵さんと小児外科医の松永正訓さんが対談(撮影/浅野剛)

「発達障害」に関して、親のあり方や周囲の応じ方が各所で論じられている。そんな中、自閉症として生まれてきた少年・勇太くん(仮名)とその母を取材した単行本『発達障害に生まれて』が版を重ねている。障害児を授かった親は、周辺社会は、どのように歩を進めるのがいいのか──育児や日々の生活を綴るブログで多くのファンを持つ女優・奥山佳恵さんと同書の著者であるベテラン小児外科医・松永正訓(ただし)さんが対談した。奥山さんは2011年に誕生した次男・美良生(みらい)くんが生後1か月半の時にダウン症と告げられた。

奥山:先生の著書を読んで、勇太くんのお母さんと私で、母としての思いが重なる部分が非常にあったなぁ、と思いました。私は初めての子育てであまり上手に対応できなかったから、2人目は笑って子育てをしようというテーマがあったけれども、違った意味で笑えることができなくなってしまったというところはありましたね。

松永:奥山さんが書かれた本(『生きてるだけで100点満点!』)にあった旦那さんの言葉に、ある意味、障害児を授かる本質があると思います。わが子が生まれた時、親は誰しも、「この子は学校に通い、勉強して、恋愛をして…」と夢を抱きます。

 ぼくも子どもが2人いるんですけど、子どもができた時、普通に学校に行って、友達ができて、家内はママ友とうまくやっていって、できればちょっとぐらい勉強ができて、いい会社に就職できて、いい人と巡り会って結婚して…と思いました。いってみれば普通です、それが。だけど、そういう“普通”が障害児を授かると消えちゃうんですよね。うちの子どもはこういうことが経験できなくなっちゃうのか、と。

奥山:私の中では、産んだわが子は、触れ合っているとかわいいと思えるところが救いではあったんです。ちょっとした仕草とか泣き声とかにおいとか。生まれてきたことに本当に感謝をするし、心からかわいいと思えるんだけど、その子から離れた時や、寝たのでベッドに置いて家事をしている時に不安が襲ってきて。触れていると安心するけど、離れると不安になる。その繰り返しでしたね。

 だんだんその時間が短くなってきて、心からどんな子であっても受け入れられるとなってきましたけど。

松永:よくよく考えてみれば、誰もが“普通”に対する欲を持っていると思うけど、実は誰もがけっこう簡単に“普通”から外れてしまう。学校で友達との関係が崩れていじめにあって登校拒否になったり、病気になって長期欠席になったりとか。そういうことで普通からずれていく子っています。そこまで深刻じゃなくても、親友ができないとか、友達とけんかしたりとか。そういう悩みを抱えて生きてる子ってたくさんいると思うんです。

関連キーワード

関連記事

トピックス

今季から選手活動を休止することを発表したカーリング女子の本橋麻里(Xより)
《日本が変わってきてますね》ロコ・ソラーレ本橋麻里氏がSNSで参院選投票を促す理由 講演する機会が増えて…支持政党を「推し」と呼ぶ若者にも見解
NEWSポストセブン
白石隆浩死刑囚
《女性を家に連れ込むのが得意》座間9人殺害・白石死刑囚が明かしていた「金を奪って強引な性行為をしてから殺害」のスリル…あまりにも身勝手な主張【死刑執行】
NEWSポストセブン
失言後に記者会見を開いた自民党の鶴保庸介氏(時事通信フォト)
「運のいいことに…」「卒業証書チラ見せ」…失言や騒動で謝罪した政治家たちの実例に学ぶ“やっちゃいけない謝り方”
NEWSポストセブン
球種構成に明らかな変化が(時事通信フォト)
大谷翔平の前半戦の投球「直球が6割超」で見えた“最強の進化”、しかしメジャーでは“フォーシームが決め球”の選手はおらず、組み立てを試行錯誤している段階か
週刊ポスト
参議院選挙に向けてある動きが起こっている(時事通信フォト)
《“参政党ブーム”で割れる歌舞伎町》「俺は彼らに賭けますよ」(ホスト)vs.「トー横の希望と参政党は真逆の存在」(トー横キッズ)取材で見えた若者のリアルな政治意識とは
NEWSポストセブン
ベビーシッターに加えてチャイルドマインダーの資格も取得(横澤夏子公式インスタグラムより)
芸人・横澤夏子の「婚活」で学んだ“ママの人間関係構築術”「スーパー&パークを話のタネに」「LINE IDは減るもんじゃない」
NEWSポストセブン
LINEヤフー現役社員の木村絵里子さん
LINEヤフー現役社員がグラビア挑戦で美しいカラダを披露「上司や同僚も応援してくれています」
NEWSポストセブン
モンゴル滞在を終えて帰国された雅子さま(撮影/JMPA)
雅子さま、戦後80年の“かつてないほどの公務の連続”で体調は極限に近い状態か 夏の3度の静養に愛子さまが同行、スケジュールは美智子さまへの配慮も 
女性セブン
場所前には苦悩も明かしていた新横綱・大の里
新横綱・大の里、場所前に明かしていた苦悩と覚悟 苦手の名古屋場所は「唯一無二の横綱」への起点場所となるか
週刊ポスト
医療的ケア児の娘を殺害した母親の公判が行われた(左はイメージ/Getty、右は福岡地裁)
24時間介護が必要な「医療的ケア児の娘」を殺害…無理心中を計った母親の“心の線”を切った「夫の何気ない言葉」【判決・執行猶予付き懲役3年】
NEWSポストセブン
近況について語った渡邊渚さん(撮影/西條彰仁)
渡邊渚さんが綴る自身の「健康状態」の変化 PTSD発症から2年が経ち「生きることを選択できるようになってきた」
NEWSポストセブン
昨年12月23日、福島県喜多方市の山間部にある民家にクマが出現した(写真はイメージです)
《またもクレーム殺到》「クマを殺すな」「クマがいる土地に人間が住んでるんだ!」ヒグマ駆除後に北海道の役場に電話相次ぐ…猟友会は「ヒグマの肉食化が進んでいる」と警鐘
NEWSポストセブン