◆貿易戦争が生活に与える影響
米中の貿易戦争は、決して“対岸の火事”ではない。先行きは、楽観しないほうがいい。貿易戦争は、企業業績の下振れを通して、わたしたちの生活にも大きな影響を与える恐れがある。
なぜなら、企業の業績が悪化すると、わたしたちの受け取る給料も減少する可能性があるからだ。その場合、人々の節約志向が強まり、消費意欲は低下するだろう。人々の消費意欲が弱まると、追加的に企業業績への下押し圧力が高まり、わが国の景況感が一段と悪化する恐れもある。
わが国の労働市場にも影響が広がるだろう。10月の有効求人倍率は8か月ぶりに低下して1.62倍だった。求人倍率そのものは高水準を維持しているが、先行き警戒感が高まるとともに、企業の採用意欲は低下する可能性がある。また、貿易戦争は学生の就職活動にもかなりの影響を与えるだろう。来年度以降、これまでのような売り手市場が続くとは言いづらくなっている。
貿易戦争への懸念が高まるとともに、金融市場では円高・株安が進みやすい。それは、わが国の家計の資産形成にも負の影響を与える恐れがある。資産価格の下落などによって家計の資産が目減りすれば、国内の需要が後退し、デフレ圧力が高まる恐れもある。
現状、米中が短期間で歩み寄り、貿易戦争への懸念が解消される展開は見込みづらい。中国向け輸出で業績を拡大させてきた企業だけでなく、個々人の生活にも、貿易戦争が無視できない影響を与える可能性があることは冷静に考えるべきだ。