国内

故郷を捨てた埼玉在住ワラビスタン「トルコで暮らすよりまし」

クルド人の新年祭「ネブロス」の様子(蕨市・市民公園) 共同通信社

 クルド人は、祖国を持たない世界最大の民族と言われる。その数およそ3000万人。主にトルコ、イラク、シリアなどに暮らしている。そして日本にも。2000人超の在日クルド人が暮らす街を、ノンフィクションライターの山川徹氏が訪れた。

 * * *
 ワラビスタン。埼玉県蕨市がそう呼ばれて20年以上が経つ。「スタン」とは「国」や「土地」を意味するペルシャ語である。1990年代、蕨市や隣接する川口市に住みはじめたトルコ系クルド人が名付けたとされる。

 西川口の夜は、中国や韓国に加え、ネパールやフィリピンなどの飲食店の看板に彩られる。多様な言語が飛び交い、国籍不明の男女が往来する光景はカオスである。そんな西川口駅近くにクルド人が集まるトルコ料理屋Mがある。

「ぼくがトルコから日本にきたのは7年前。父が難民として日本で生活していました。ぼくも旅行者として来日し、そのまま難民として暮らしはじめたんです」

 カウンターで食事していた22歳のJさんはそう語った。ワラビスタンで暮らすトルコ系クルド人のほとんどが難民として来日しているのは知っていたが、流暢な日本語でさらりと口にした“難民”という言葉に一瞬、戸惑いを覚えた。

 もともと川口は鋳物工業で栄えた町だ。戦前から工場労働者が多く暮らし、西川口は歓楽街として発展する。さらに高度経済成長期には多くの外国人労働者が集住した。先に住みはじめていたイラン系クルド人の伝手を辿り、トルコ系クルド人が来日しはじめたのは1990年代のことである。現在、蕨市、川口市に2000人を超すクルド人が暮らしていると推測されている。

関連キーワード

関連記事

トピックス

真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信フォト)
オフ突入の大谷翔平、怒涛の分刻みCM撮影ラッシュ 持ち時間は1社4時間から2時間に短縮でもスポンサーを感激させる強いこだわり 年末年始は“極秘帰国計画”か 
女性セブン
65歳ストーカー女性からの被害状況を明かした中村敬斗(時事通信フォト)
《恐怖の粘着メッセージ》中村敬斗選手(25)へのつきまといで65歳の女が逮捕 容疑者がインスタ投稿していた「愛の言葉」 SNS時代の深刻なストーカー被害
NEWSポストセブン
俳優の水上恒司が年上女性と真剣交際していることがわかった
「はい!お付き合いしています」水上恒司(26)が“秒速回答、背景にあった恋愛哲学「ごまかすのは相手に失礼」
NEWSポストセブン