ちなみに2人が出会った時、墓地に咲いていた彼岸花は別名〈捨て子花〉とも呼ばれ、花言葉は〈諦め〉そして〈悲しい思い出〉だ。が、人はその諦念や過去を乗り越えて生き直すこともでき、一度は復讐を悲願とした幸子の変化は、下村作品らしい人間肯定の光をも宿す。
【プロフィール】しもむら・あつし:1981年京都生まれ。2014年『闇に香る嘘』で第60回江戸川乱歩賞を受賞しデビュー。同作は週刊文春ミステリーベスト10第2位となるなど話題に。他に『生還者』『サハラの薔薇』『黙過』等。京都在住。大阪在住の乱歩賞作家・呉勝浩氏とはよく飲む仲。「呉さんの『雛口依子の最低な落下とやけくそキャノンボール』も加害者と被害者の話ですし、今後は事前に相談しようと言ってるくらいテーマが被るんです(笑)」。170cm、82kg、A型。
構成■橋本紀子 撮影■国府田利光
※週刊ポスト2019年1月11日号