北京市が運行する路面電車・西郊線の香山駅には、乗車前にセキュリティチェックを受ける小屋が設置されている。
気軽に利用してきた新幹線だったのに、面倒な手間が増えたら、敬遠する人も出てくるだろう。
しかし、社会や安全に対する認識は大きく変わりつつある。
2020年には東京五輪が開催される。世界が注目するビッグイベントだけあって、多くの賓客・観光客が東京を訪れるだろう。その東京で、万が一にもテロが起きたら、それは鉄道事業者の信頼を揺るがす。国家の威信も大きく失墜する。
「国土交通省では、日常的に鉄道のテロ対策について議論・意見交換しています。鉄道事業者と情報共有や意見交換をする連絡会議を設置し、そこでは新たな対策を話し合ったり統一したマニュアル作成したりといったことにも取り組んでいます」と話すのは、国土交通省鉄道局総務課危機管理室の担当者だ。
しかし、国土交通省の連絡会議で話し合われているのは、あくまでも通常の鉄道利用における話だ。東京五輪開催時は、多くの訪問客が新幹線・地下鉄・在来線を利用するだろう。五輪開催時の対策は、どうなっているのか?
「東京五輪開催時におけるテロ対策は、重要な課題です。しかし、これは内閣府や法務省、防衛省、警察庁といった複数の省庁で組織される東京オリンピック競技大会・東京パラリンピック競技大会推進本部事務局(以下、事務局)が所管しています」
事務局には警察庁や防衛省といった省庁のほか、サイバーテロや消防庁を所管する総務省、感染症対策にあたる厚生労働省なども名を連ねる。五輪における鉄道のテロ対策は、普段の鉄道テロ対策とは別組織があたる。
事務局での協議は今のところ交通の混雑対策が中心で、テロ対策の議論は活発化していない。しかし、このほど鉄道のテロ対策を強化する実証実験として、2月から東京メトロ霞ヶ関駅で手荷物検査を試験的に実施すると新聞各紙が伝えた。
実証実験の詳細は明らかにされていないが、空港で実施されている手荷物検査と同等のセキュリティチェックになることが予想される。霞ヶ関駅での実証実験は、五輪開催時を想定したものだろう。
「日常的に利用する地下鉄や在来線で身体検査や手荷物検査を実施すれば、鉄道の利便性が損なわれます。そのため、在来線や地下鉄での身体検査・手荷物検査を導入することは想定していません」(同)