実際、認定されたテストの一つ、TOEICは数多くの対策問題集が発売されているが、試験を主催する「一般財団法人国際ビジネスコミュニケーション協会」が発行する『公式 TOEIC Listening & Reading 問題集4』はAmazonでこの分野のベストセラー1位(1月15日現在)。1冊で税込3024円と高額だが、他の公式問題集も軒並み上位を占めていて、売る側にとっては“ビジネス”として成立している。
昨年11月の衆議院文部科学委員会の質疑でも「試験の出題者と問題集の販売者が一緒でいいのか」と追及を受けたが、柴山昌彦・文科大臣は「当事者に検討してもらう」というのみで、解決策は示されていない。各社、各団体では「試験問題の作成担当者と、対策本・講座の制作担当者を分離させる」といった対応が取られているとされるが、それで十分なのか、チェックする仕組みは今のところない。
一方で、民間試験を扱う「業界」にとっては“特需”だ。文部科学省が2018年12月25日に発表した「受検ニーズ調査」は、最初の高校3年生が2020年4~12月の間に1人最大2回の機会があることを前提に、のべ123万人が民間試験を受けると予測する。
現在、大学入試センターから認定を受けた民間試験は8つ。検定料には幅があるが、現状で最も安いのが実用英語技能検定(英検)3級の5800円。逆に最も高いのはケンブリッジ英語検定の2万7000円だ。仮にその間をとって1万円と見積もっても、〈1万円×123万人=123億円〉に膨れ上がる。高校2年から練習で受検する者も含めたら簡単に150億円を超える市場が出現する計算だ。まさに巨大な“ビジネスチャンス”である。
*ケンブリッジ大学英語検定機構によると、2020年4月以降の同検定の検定料(最高のC2レベル)は現在のIELTSと同じ水準の2万5380円に引き下げられる予定。
◆旗振り役「慶應元塾長」への疑問
この「民間試験導入」はどのようにして実現に至ったのか。