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今上天皇は15歳の春に「私は必ず天皇になります」と綴られた

まもなく退位の日を迎えられる(写真/JMPA)

 今上天皇がまもなく退位の日を迎えようとしている。象徴天皇の在り方を模索し、国民の苦しみに寄り添い続けた今上天皇の折々の言葉に注目したのが、『天皇メッセージ』を上梓したノンフィクション作家・矢部宏治氏である。とくに皇太子時代の言葉は、現在のお姿、お考えを知る上で欠かせない記録であるという。

 * * *
 みなさんは、ご自分が15歳だった春のことを、おぼえているでしょうか。「勉強やクラブ活動が大変だった」という方もいるでしょうし、「恋愛で頭がいっぱいだった」という方もいるかもしれません。

 いずれにせよ、新しい世界の訪れを前に、期待と不安に胸をふくらませていたのではないでしょうか。まだ何者でもなく、けれども何にでもなれそうな自信をどこかに秘めた、人生でもっとも不安定な、だからこそ希望に満ちた季節。

 ところがこの言葉を見てください。

“I shall be Emperor.”(私は必ず天皇になります)

 これは明仁天皇が15歳の春(1949年4月)、学習院高等科の最初の英語の授業で、「将来、何になりたいかを書きなさい」という課題に対して英語で書いた回答です。

 この言葉の真意を明仁天皇はそれから40年近くたったのち、次のように説明されています。

「普通の日本人だった経験がないので、何になりたいと考えたことは一度もありません。皇室以外の道を選べると思ったことはありません」(1987年9月/即位の1年4カ月前、アメリカの報道機関からの質問に対する文書での回答/英文)

 だれもが無限の可能性をもつ15の春に、自分だけは「職業を選ぶ自由」がないことをよくわかっていた。理由は〈自分は普通の日本人ではなかった〉から。それは日本の少年としては、ただひとり経験する孤独な環境だったといえるでしょう。

 明仁天皇の原風景として語られるシーンに、敗戦直後、疎開先の日光から戻ってきたときに見た、焼け野原になった東京の町があるといわれます(1945年11月)。

 もちろんその衝撃は大きかったでしょうが、それは多かれ少なかれ、ほかの少年たちも経験した出来事でした。

 重要なのは、その焼け野原になった日本という国の復興が、自分の肩にかかっていると、そのとき11歳の少年が本気で思い定めていたということです。

*矢部宏治著『天皇メッセージ』(『戦争をしない国 明仁天皇メッセージ』増補改訂版。http://sgkcamp2.tameshiyo.me/MESSAGEで全文無料公開中)より

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