国内

ホストクラブ通い女性、現実の隙間を埋めるべくネット多用

「眠らない街」の深き闇(写真/アフロ)

 近頃、東京・新宿の歓楽街・歌舞伎町では、若い女性の自殺や自殺未遂が相次いでいるという。

 2018年10月2日、歌舞伎町のあるビルから女性が飛び降り、死亡した。その女性はホストクラブの常連客で、風俗店で働きながら「担当」と呼ばれる目当てのホストに入れ込んでいた。

 このビルにはホストクラブやバーが15軒ほど入居する。周辺のビルも似たようなもので、目の前の通りは、通称「ホスト通り」。2018年10月のわずか1か月間で、100mほどしか離れていない2棟のビルで起きた飛び降りは、未遂も含めて少なくとも7件。街では、女性たちの飛び降りとホストクラブを関連付ける声は根強い。

 飛び降りた女性が亡くなった2日後の深夜、ビルの屋上に若い女性が立っていた。通行人からの通報で警官や救急隊員が駆けつけ、ビルの下にマットを設置。集まった野次馬も一斉に屋上を見上げた。

 シノさん(21才)。1年半、ホストクラブに通い続けた末の行動だった。

 都内の実家で両親と暮らす一人っ子。パツンと切りそろえられた前髪に、肩の少し下くらいまでの黒髪。透き通るような白い肌で、蛍光ピンクのネイルを塗る「普通の女の子」だ。一昨年4月、バイト先のガールズバーの同僚に誘われてホストクラブに行ったのが始まりだった。

「いつも接客する側なのに、行けばイケメンが褒めてくれてお酒も飲めて。活気のある時間に行ったら楽しくて『もっと行ってお金を使いたい!』ってなったんです」(シノさん)

 決断は早かった。ガールズバーを辞めて吉原(東京・台東区)のソープランドで働き始め、月70万~80万円をホストクラブで使うようになった。一晩で150万円をはたいたこともある。上客ゆえにVIPルームに通される特別扱いを受け、担当のホストとは沖縄旅行まで行った。

「ほかのどの客よりもお金を使って、自分だけ特別扱いされるあの快感。高級シャンパンを開けると、私のときだけお店にX JAPANの『Rusty Nail』が流れるんです。ほかは客でも、自分だけは彼女。そう思っていました。とにかく気持ちいいんです」(シノさん)

 シノさんの足がビルの屋上に向かったのは、ホストクラブや風俗店など「夜の業界」関係者が書き込むネット掲示板で、自分が叩かれているのを目にして落ち込んだのがきっかけだった。ちょうど、行くはずだった東京ディズニーランドへ行けなくなり、担当ホストと連絡がつかないことも重なった。気づけば屋上のふちに座り、足をぶら下げていた。

 それまでも気持ちが揺れることはあった。担当ホストとけんかをして目の前で手首を切ったり、抗うつ剤をのんだり。屋上に行ったのは「死にたい」と思ったからではないと、シノさんは言う。

「でも、ふと『今なら死ねる』とも思ったんです。気づいた人たちがネット動画でライブ配信して、それを見たどこかのホストが引っ張って止めてくれた。でも、それがなかったら落ちていましたね」

 風俗店で働き、ホストクラブに通う女性たちの世界は狭い。周囲にいるのは同僚とホストばかり。彼女たちは、現実の隙間を埋めるようにネットを多用する。ツイッターやネット掲示板でホスト常連客同士の横のつながりを持ち、時に互いの好みを語り、時にライバルの情報収集を図る。

 一方でネットがもたらす情報は、見る者を蝕むことがある。リストカットや睡眠薬の写真が盛んにアップされ、飛び降り自殺の現場写真は瞬く間に拡散する。ネット掲示板の中傷で死に向かい、ツイッターで知った人に助けられたシノさんの境遇には、ネットの光と闇が入り交じる。

 以来、シノさんはホストクラブに行かなくなった。

「今は自分と家族のためにお金を使いたい。すっごく楽しかったし、ホストクラブに行っていたことは後悔していません。歌舞伎町は一度入ると抜けられないんです。まるで見えない膜に覆われたように」(シノさん)

※女性セブン2019年2月7日号

関連記事

トピックス

米倉涼子の“バタバタ”が年を越しそうだ
《米倉涼子の自宅マンションにメディア集結の“真相”》恋人ダンサーの教室には「取材お断り」の張り紙が…捜査関係者は「年が明けてもバタバタ」との見立て
NEWSポストセブン
地雷系メイクの小原容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「家もなく待機所で寝泊まり」「かけ持ちで朝から晩まで…」赤ちゃんの遺体を冷蔵庫に遺棄、“地雷系メイクの嬢”だった小原麗容疑者の素顔
NEWSポストセブン
渡邊渚さん
(撮影/松田忠雄)
「スカートが短いから痴漢してOKなんておかしい」 渡邊渚さんが「加害者が守られがちな痴漢事件」について思うこと
NEWSポストセブン
平沼翔太外野手、森咲智美(時事通信フォト/Instagramより)
《プロ野球選手の夫が突然在阪球団に移籍》沈黙する妻で元グラドル・森咲智美の意外な反応「そんなに急に…」
NEWSポストセブン
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
11月27日、映画『ペリリュー 楽園のゲルニカ』を鑑賞した愛子さま(時事通信フォト)
愛子さま「公務で使った年季が入ったバッグ」は雅子さまの“おさがり”か これまでも母娘でアクセサリーや小物を共有
NEWSポストセブン
安福久美子容疑者(69)は被害者夫の高羽悟さんに思いを寄せていたとみられる(左:共同通信)
【名古屋主婦殺害】被害者の夫は「安福容疑者の親友」に想いを寄せていた…親友が語った胸中「どうしてこんなことになったのって」
NEWSポストセブン
高市早苗・首相はどんな“野望”を抱き、何をやろうとしているのか(時事通信フォト)
《高市首相は2026年に何をやるつもりなのか?》「スパイ防止法」「国旗毀損罪」「日本版CIA創設法案」…予想されるタカ派法案の提出、狙うは保守勢力による政権基盤強化か
週刊ポスト
62歳の誕生日を迎えられた皇后雅子さま(2025年12月3日、写真/宮内庁提供)
《累計閲覧数は12億回超え》国民の注目の的となっている宮内庁インスタグラム 「いいね」ランキング上位には天皇ご一家の「タケノコ掘り」「海水浴」 
女性セブン
米女優のミラーナ・ヴァイントルーブ(38)
《倫理性を問う声》「額が高いほど色気が増します」LA大規模山火事への50万ドル寄付を集めた米・女優(38)、“セクシー写真”と引き換えに…手法に賛否集まる
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン
中居正広氏の近況は(時事通信フォト)
《再スタート準備》中居正広氏が進める「違約金返済」、今も売却せず所有し続ける「亡き父にプレゼントしたマンション」…長兄は直撃に言葉少な
NEWSポストセブン