下位に甘んじることが続くと、リーディング上位の厩舎などでは、ずっと厩舎に置いておくことが難しくなる。馬主さんの意向にもよりますが、開業間もない厩舎や地方競馬などへの移籍の可能性も大きくなるでしょう。あるいは、引退をささやかれるタイミングが、これまでよりも早くなるかもしれません。
厩舎の動きも当然変わってくる。
これまではダービーが大きな区切りでした。1、2月の段階から、「降級」に望みを託して休養を挟む4歳馬もいました。また、上のクラスでも通用しそうだと思うと、とりあえず現級を勝っておこうと考えましたが、そういう馬はむしろ使うレースをしっかりしぼって、念入りに調教した方がいいと考えるようになる。
厩舎にとっては利点もあります。毎年ダービーの前後は、秋のGIを狙えるような馬たちが一斉に放牧に出ますが、入れ替わりに降級馬を放牧から戻したり、さらに2歳馬が入ってくる時期と重なったりして、検疫の順番待ちや馬房管理に悩まされます。そういった入れ替えの煩雑さは緩和されるはずです。
いずれにしろ、ひとつの基準がなくなったことで、馬の調子をしっかり見きわめる目が、ますます問われることになります。
これらは馬券検討には直接関係がないかもしれませんが、この制度の変化にどう対処しているかで各厩舎の姿勢がわかると思います。
●すみい・かつひこ/1964年石川県生まれ。2000年に調教師免許取得、2001年に開業。以後17年で中央GI勝利数24は歴代3位、現役では2位。2017年には13週連続勝利の日本記録を達成した。ヴィクトワールピサでドバイワールドカップを勝つなど海外でも活躍。引退馬のセカンドキャリア支援、障害者乗馬などにも尽力している。引退した管理馬はほかにカネヒキリ、ウオッカなど。『競馬感性の法則』(小学館)が好評発売中。2021年2月で引退することを発表している。
※週刊ポスト2019年2月1日号