ライフ

歴史研究家・本郷和人氏が選ぶ「元寇」等中世史の名著6冊

歴史研究者の本郷和人氏(写真:三島正)

 新たな時代がまもなく訪れるいま、我々はどんな書物から現代日本を考えれば良いのか? 歴史研究家の本郷和人 (歴史研究者)が選んだ中世史の名著6冊を紹介しよう。

 * * *
「日本は、古代からひとつの言語を使い、ひとつの政権が支配し、ひとつの歴史、伝統を共有するまとまった国家だった」という言説がある。だが、それは間違いだ。そのようなまとまりのある国家が出現したのは、豊臣秀吉が1590年に、東国を支配していた北条氏を破り、全国を統一して以降だ。それ以前鎌倉幕府の成立から戦国時代の終わりまでの日本の中世を特徴付けるのは「分裂」である。

 その観点から日本の中世を知るための名著6冊を選んだ。「どの国のどの時代も現代史である」という言葉がある。「分裂」の時代だった日本の中世を現代日本の鏡にすることで、統一された国家の長所と短所を考えてほしい。

(1)『鎌倉時代』は鎌倉時代論の草分け的な書。戦前の実証史学は幕府研究は蓄積していたが、朝廷については解明していなかった。著者の龍粛は戦前から、膨大な史料を読み込み、朝廷の状況を分析した。その結果、鎌倉時代においては武力を表看板とする幕府と、政治、経済を表看板とする朝廷の、ふたつの政権が並立し、それが密接に関わり、交渉していたことを明らかにした。それを戦後の1957年にまとめたのが本書である。60年余り経つが、いまだに読む価値がある。

 著者は、朝廷の状況を明らかにしたことで戦前の「皇国史観」に寄与した。だが、戦後に「皇国史観」が否定されても、実証的な手法によって導き出した歴史像を変えなかった。その姿勢に研究者の良心を見ることができる。

関連キーワード

関連記事

トピックス

遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《自宅から遺体見つかる》遠野なぎこ、近隣住民が明かす「部屋からなんとも言えない臭いが…」ヘルパーの訪問がきっかけで発見
NEWSポストセブン
大谷翔平(時事通信)と妊娠中の真美子さん(大谷のInstagramより)
《大谷翔平バースデー》真美子さんの“第一子につきっきり”生活を勇気づけている「強力な味方」、夫妻が迎える「家族の特別な儀式」
NEWSポストセブン
詐称疑惑の渦中にある静岡県伊東市の田久保眞紀市長(HP/Xより)
田久保眞紀市長の学歴詐称疑惑 伊東市民から出る怒りと呆れ「高卒だっていい、嘘つかなきゃいいんだよ」「これ以上地元が笑いものにされるのは勘弁」
NEWSポストセブン
東京・新宿のネオン街
《「歌舞伎町弁護士」が見た性風俗店「本番トラブル」の実態》デリヘル嬢はマネジャーに電話をかけ、「むりやり本番をさせられた」と喚めき散らした
NEWSポストセブン
横浜地裁(時事通信フォト)
《アイスピックで目ぐりぐりやったあと…》多摩川スーツケース殺人初公判 被告の女が母親に送っていた“被害者への憎しみLINE” 裁判で説明された「殺人一家」の動機とは
NEWSポストセブン
遠野なぎこ(本人のインスタグラムより)
《女優・遠野なぎこのマンションで遺体発見》近隣住民は「強烈な消毒液の匂いが漂ってきた」「ポストが郵便物でパンパンで」…関係者は「本人と連絡が取れていない」
NEWSポストセブン
記者が発行した卒業証明書と田久保市長(右/時事通信)
《偽造or本物で議論噴出》“黄ばんだ紙”に3つの朱肉…田久保真紀・伊東市長 が見せていた“卒業証書らしき書類”のナゾ
NEWSポストセブン
JESEA主席研究員兼最高技術責任者で中国人研究者の郭広猛博士
【MEGA地震予測・異常変動全国MAP】「箱根で見られた“急激に隆起”の兆候」「根室半島から釧路を含む広範囲で大きく沈降」…5つの警戒ゾーン
週刊ポスト
盟友である鈴木容疑者(左・時事通信)への想いを語ったマツコ
《オンカジ賭博で逮捕のフジ・鈴木容疑者》「善貴は本当の大バカ者よ」マツコ・デラックスが語った“盟友への想い”「借金返済できたと思ってた…」
NEWSポストセブン
米田
《チューハイ2本を万引きで逮捕された球界“レジェンド”が独占告白》「スリルがあったね」「棚に返せなかった…」米田哲也氏が明かした当日の心境
週刊ポスト
東川千愛礼(ちあら・19)さんの知人らからあがる悲しみの声。安藤陸人容疑者(20)の動機はまだわからないままだ
「『20歳になったらまた会おうね』って約束したのに…」“活発で愛される女性”だった東川千愛礼さんの“変わらぬ人物像”と安藤陸人容疑者の「異変」《豊田市19歳女性殺害》
NEWSポストセブン
大阪・関西万博で、あられもない姿をする女性インフルエンサーが現れた(Xより)
《万博会場で赤い下着で迷惑行為か》「セクシーポーズのカンガルー、発見っ」女性インフルエンサーの行為が世界中に発信 協会は「投稿を認識していない」
NEWSポストセブン