溝口:ヤクザの本業とは何か。喧嘩なんです。喧嘩に勝てばカネが湧いてくる。暴力による恐怖を植えつけることで、一般人は震え上がってヤクザにみかじめ料を渡すんですから。それが今はなくなってしまっている。それが分かっているから、なおのこと経済ヤクザと呼ばれるのは嫌なんでしょう。
鈴木:山口組が分裂してから本格的な抗争をしていないことが、シノギをやりづらくしているのは事実です。血と抗争で積み上げたイメージを、分裂したのにお互いを黙認し合っている状態が台無しにしてしまった。抗争をしないヤクザは怖くないし、そこにカネは集まらない。
溝口:抗争すると警察に幹部まで逮捕されてさらにシノギがしづらくなるというのが彼らの言い分でしょうが、それはヤクザの本分からは外れている。カネが干上がって、ヤクザにとっては軽犯罪で刑務所にいるのが一番安全で飯にも困らないという時代がすでに始まっています。
鈴木:刑務所の中なら一番偉そうに振る舞えますからね(笑い)。
【PROFILE】
◆鈴木智彦(フリーライター)すずき・ともひこ/1966年北海道札幌生まれ。『実話時代』の編集を経てフリーへ。『サカナとヤクザ』(小学館)が話題に。最新刊は『昭和のヤバいヤクザ』(講談社+α文庫)
◆溝口敦(ジャーナリスト)みぞぐち・あつし/1942年東京浅草生まれ。早稲田大学政経学部卒。『食肉の帝王』で講談社ノンフィクション賞を受賞。『暴力団』『続・暴力団』(ともに新潮社)、『山口組三国志 織田絆誠という男』(講談社+α文庫)など著書多数
※週刊ポスト2019年2月15・22日号