ビジネス

ほとんどの分譲マンションはやがて「粗大ごみ」となる運命

築40年超のマンションはすでに73万戸もある

 滋賀県野洲市で築47年・3階建ての“廃墟マンション”が崩壊寸前のまま放置され問題となっている。かれこれ10年以上誰も住んでおらず、所有者の一部と連絡が取れないことから解体もできない状態だという。だが、こうした「空き家問題」は決して他人事ではない。近著に『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)がある住宅ジャーナリストの榊淳司氏が、いよいよ現実味を帯びるマンション廃墟化について警鐘を鳴らす。

 * * *
 すべてのマンションは廃墟になる──これは私が最近刊行した拙著で訴えてきたことである。近未来に可視化されるであろうこの残酷極まりない現実が迫っていることが明らかになった。

 報道によれば、滋賀県野洲市野洲の老朽化した空き家マンションを巡り、市が対応に苦慮しているという。

 このマンションは、壁が崩れて瓦礫が散乱したり、鉄骨に吹き付けられたアスベストが露出したりと危険な状態だが、土地・建物の所有者の一部と連絡が取れず、自主解体の議論が進んでいない。「行政代執行」による解体も検討されているものの、解体予算の議会承認や解体業者の選定などに時間がかかりそうな雲行きで、周辺住民からは早急な対策を望む声が上がっているという。

 じつのところ、こうしたまさに廃墟化するマンションに対して、法的な制度はまったく不備な状態である。

 このマンションは全9戸。そのうち7戸の所有者とは連絡が取れて解体には同意しているらしい。ただ、今のままだと解体するには法的に困難である。

 そもそも、分譲マンションというのは民法で規定する共有財産である。1住戸ずつに区分所有という私有財産権が定められている。建物を解体処分するためには、基本的に区分所有者全員の同意が必要とされる。このマンションの場合なら9住戸の所有者全員だ。

 報道によれば、残り2住戸の区分所有者とは連絡が取れていない。したがってこの2戸については解体に同意するという意思が確認できないのだ。

 誰も住んでおらず周辺の住民に被害が生じそうなこのマンションを、行政である野洲市を含めた誰かが現状のまま解体すると、連絡のとれない2住戸の区分所有者の財産権を侵害することになる。解体後に、その2住戸の区分所有者が現れて違法性を問われたり、損害賠償の責任を問われたりする可能性だってあり得る。

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン