凜とした立ち姿の奥谷さん(撮影/田中智久)


「近年は世の中の意識の変化とITの発達により、管理職経験者である50代の独立や20代のベンチャー経験者の起業が珍しくなくなりました。女性が起業する理由は昔からあまり変わらず、男性が規模拡大や儲けを重視する一方、女性は“お客さんを幸せにしたい”という思いを優先する傾向があります」(横田さん)

 今をときめく女性社長はどんな“思い”を抱くのか。

◆女性は男性から嫉妬されてこそ一人前よ!

「私が何気なく言ったことを林真理子さんはよく覚えています。『中島ハルコ』が人気なのは、きっと今の若い子たちがバシッと怒ってくれる人を欲しているからでしょうね」

 と語るのは、奥谷禮子さん(68才)。林真理子さんと親交が深く、『ハイパーミディ 中島ハルコ』のモデルになった女性で、コミックに登場する数々の金言はすべて奥谷さんの口からリアルに発せられたものだ。

 奥谷さんは1982年、31才の時に人材派遣会社「ザ・アール」を設立。37年間代表を務めた後、昨年から新たにコンサルティング会社を立ち上げた。当時、日本に「若い女性起業家」は皆無に近かった。

「当初は『アールです』と営業の電話をすると、銀座のクラブのツケの催促と間違われてガチャンと切られたものです(笑い)。日本のビジネス界は100%の男社会。女性は外国人以上に“異邦人”でした。政治も経済も男性中心に回っていることを否定しても仕方がない」(奥谷さん・以下同)

 奥谷さんは、「まず“男社会の仕組み”を徹底的に理解して、自分のものにしてやろうと思った」と話す。

「朝から夕方までめいっぱい働いて、ほぼ毎日、夜は会食。銀座や赤坂の料亭に行って、カラオケやクラブに飲みに行く。信頼関係をつくるのに女も男もないから、徹底的につきあうしかないんです」

 企画書の作り方、営業のやり方、請求書の送り方…ビジネスでわからないことは、何でも周囲に教えを乞うた。仕事で失敗して、取引先に何度も怒られても、「やっぱり女性には無理だ」と言われるのが悔しくて食らいついた。

「約束の時間に遅刻しないこと、お会いした人にお礼状を書くこと、徹底的に健康管理をして体調を崩さないことなど、ビジネスをする上で基本的なことはすべて、若い頃、先輩たちに厳しく教わりました。

 男だって一心不乱に仕事をしているんです。女だからって、手加減してもらえるわけじゃない。さらに言えば、男性にとっても、仕事のできる女性たちは自分の地位を脅かすライバルであって、“優しくしてあげよう”なんて思うはずもない。厳しいけれど、それは当然のことなんです」

 35才の時、日本を代表する企業経営者団体「経済同友会」の初の女性会員になった。

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