──とはいえ、少子高齢化が深刻さを増すなかで、空き家は1000万戸に達すると目されています。新築住宅の販売は厳しくなっていくのでは?
芳井:最近、社内でよく言うんです。「かつて、我々が戸建て団地を造った頃のカタログを見てみろ。どのように住宅を売ったかを思い出してみなさい」と。
すると、当時はご入居者様に夢を与えていたんだということがよくわかるんですよ。住宅を売るということは、「箱」だけでなく、「夢」を必ず同時に売っている。この住宅に住んでいただくと、こういう学校があって、こういう生活が送れますよと。今、その夢の続きを語れていない現実がある。
当時はまだ、ここまでの超高齢社会は予見できませんでしたが、「夢の続きをお客様に語れるようにするのは我々の責任じゃないか」と社内で言っています。これは大和ハウスだけではなくて、行政サイドや競合社も含めて取り組んでいかなければいけない課題です。
【PROFILE】よしい・けいいち/1958年、大阪府生まれ。中央大学文学部卒業。神戸製鋼のグループ企業を経て、1990年に32歳で大和ハウス工業入社。2011年に取締役上席執行役員、2016年に取締役専務執行役員。2017年11月より現職。
●聞き手/河野圭祐(ジャーナリスト):かわの・けいすけ/1963年、静岡県生まれ。経済誌編集長を経て、2018年4月よりフリーとして活動。流通、食品、ホテル、不動産など幅広く取材。
※週刊ポスト2019年3月15日号