国内

6種類以上の薬併用で副作用 高齢者の「多剤併用」が問題化

薬の飲み過ぎが病気を招く(写真/PIXTA)

 東京都在住の主婦・斎藤美子さん(仮名・65才)は、食事のたびに細かく仕切られた大きなピルケースを取り出す。そこには色も形もさまざまな錠剤が10種類以上入っている。

「この状態になったのは、5年前に血圧を下げる降圧剤をのみ始めたことがきっかけです。副作用で胸がむかむかするとお医者さんに相談したら、吐き気を止める薬を処方されて。その後、薬が増えたからか、胃が荒れてしまったんです。それをまた相談したら、胃薬ものむことになってしまって…。

 実は高血圧になる前から更年期障害で片頭痛があって、痛み止めものんでいるんです。しかもこの時期は、花粉症で薬がないと家事もままならなくって、気がついたらこんな量の薬をのむことになってしまいました」

 認知症になった母を施設に預けながら介護をする山崎よしえさん(仮名・54才)は、母がのんでいる薬の量に、ふと不安がよぎることがある。

「認知症の薬はただでさえ種類が多いうえ、施設に入る前から骨粗しょう症の薬やコレステロール値を下げる薬も継続してのんでいます。

 こんなに薬をのんでも、母の調子がいいとは思えないし、むしろ最近は、ぼーっとしていることの方が多くなったように思えるんです…」

 斎藤さんや山崎さんの例は決して特殊なものではない。多くの薬をのみ過ぎた結果、害が生まれてしまう「多剤併用」が問題になっている。

 厚生労働省の調査によると、1か月に1つの薬局から受け取る薬剤の数が5種類以上にのぼる人の割合は、40~64才で5人に1人、65~74才で4人に1人、74才以上になると半数近くが該当する。さらに4人に1人が7種類以上の薬を受け取っているのだという。

 厚労省は多剤併用を問題視し、「高齢者の医薬品適正使用の指針」というガイドラインを2018年5月に作成。国をあげて不要な薬を減らす取り組みを推し進めている。

 そもそも、なぜそんなにも多くの薬を処方されてしまうのか。在宅医療や訪問診療に取り組むたかせクリニック院長の高瀬義昌さんが解説する。

「理由は大きく分けて2つあります。1つ目は、高血圧、糖尿病、骨粗しょう症…といったように、複数の病気にかかってそれぞれの症状で別の病院に行き、複数の病院から薬が処方され、どんどん薬が増えていくケース。各病院で、症状そのものの薬に加えて、胃薬や鎮痛剤のような薬が重複して処方されることもあります」

 もう1つは、薬の副作用が新たな薬を生むパターンだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

ハワイ別荘の裁判が長期化している(Instagram/時事通信フォト)
《大谷翔平のハワイ高級リゾート裁判が長期化》次回審理は来年2月のキャンプ中…原告側の要求が認められれば「ファミリーや家族との関係を暴露される」可能性も
NEWSポストセブン
今年6月に行われたソウル中心部でのデモの様子(共同通信社)
《韓国・過激なプラカードで反中》「習近平アウト」「中国共産党を拒否せよ!」20〜30代の「愛国青年」が集結する“China Out!デモ”の実態
NEWSポストセブン
裁判所に移されたボニー(時事通信フォト)
《裁判所で不敵な笑みを浮かべて…》性的コンテンツ撮影の疑いで拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26)が“国外追放”寸前の状態に
NEWSポストセブン
大谷翔平と真美子さん(時事通信フォト)
《自宅でしっぽりオフシーズン》大谷翔平と真美子さんが愛する“ケータリング寿司” 世界的シェフに見出す理想の夫婦像
NEWSポストセブン
山上徹也被告が法廷で語った“複雑な心境”とは
「迷惑になるので…」山上徹也被告が事件の直前「自民党と維新の議員」に期日前投票していた理由…語られた安倍元首相への“複雑な感情”【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
アメリカの人気女優ジェナ・オルテガ(23)(時事通信フォト)
「幼い頃の自分が汚された画像が…」「勝手に広告として使われた」 米・人気女優が被害に遭った“ディープフェイク騒動”《「AIやで、きもすぎ」あいみょんも被害に苦言》
NEWSポストセブン
お騒がせインフルエンサーのボニー・ブルー(時事通信フォト)
《潤滑ジェルや避妊具が押収されて…》バリ島で現地警察に拘束された英・金髪美女インフルエンサー(26) 撮影スタジオでは19歳の若者らも一緒だった
NEWSポストセブン
山上徹也被告が語った「安倍首相への思い」とは
「深く考えないようにしていた」山上徹也被告が「安倍元首相を支持」していた理由…法廷で語られた「政治スタンスと本音」【銃撃事件公判】
NEWSポストセブン
不同意性交と住居侵入の疑いでカンボジア国籍の土木作業員、パット・トラ容疑者(24)が逮捕された(写真はサンプルです)
《クローゼットに潜んで面識ない50代女性に…》不同意性交で逮捕されたカンボジア人の同僚が語る「7人で暮らしていたけど彼だけ彼女がいなかった」【東京・あきる野】
NEWSポストセブン
山本由伸選手とモデルのNiki(Instagramより)
「球場では見かけなかった…」山本由伸と“熱愛説”のモデル・Niki、バースデーの席にうつりこんだ“別のスポーツ”の存在【インスタでは圧巻の美脚を披露】
NEWSポストセブン
モンゴル訪問時の写真をご覧になる天皇皇后両陛下(写真/宮内庁提供 ) 
【祝・62才】皇后・雅子さま、幸せあふれる誕生日 ご家族と愛犬が揃った記念写真ほか、気品に満ちたお姿で振り返るバースデー 
女性セブン
村上迦楼羅容疑者(27)のルーツは地元の不良グループだった(読者提供/本人SNS)
《型落ちレクサスと中古ブランドを自慢》トクリュウ指示役・村上迦楼羅(かるら)容疑者の悪事のルーツは「改造バイクに万引き、未成年飲酒…十数人の不良グループ」
NEWSポストセブン