「体内では脳が最も多く血液を必要としていますが、問題なのは脳が血液を送り出すポンプである心臓よりも上にあること。日中行動しているときなどは、重力の抵抗を受けているので、上向きに血液を送り出すには、高齢になるほど強い圧力が必要になる。圧力が弱まって脳に血が巡らないと、めまいや貧血、最悪の場合は脳梗塞の原因にもなる」
大櫛氏が特に警鐘を鳴らすのは、今回のガイドラインの改訂で目標値(降圧目標)が変更されることで、降圧剤を処方される人が増えることだという。
「私の推計では、降圧剤の服用を勧められる治療対象者はこれまで約1660万人だったのが、約4000万人に増えます。複数の研究や調査により、降圧剤で20以上血圧を下げると脳梗塞の発症率や死亡率が高まることがわかっている。急激な血圧低下により血流が悪くなり、血栓で脳の血管が詰まってしまうのです。
私が福島県郡山市の約4万人の男女(平均年齢約62歳)を平均6年間追跡調査したところ、血圧が180/110以上の人で降圧剤を使って血圧を最大20以上下げた人は、使わなかった人より、死亡率が5倍も高いという結果が出ました」
※週刊ポスト2019年3月29日号