新田クリニック院長の新田國夫医師は「前提として、薬を減らす場合は必ず医師に相談してほしい」と話す。
「自己判断で勝手に減らした結果、重篤な状態に陥った人もいます。必要がない薬だと自己判断せずに、必ず医師と相談しながら減らすようにしてください」
医師の高瀬さんが診察した80代の女性が持っていた処方箋には、2枚にわたってびっしり薬の名前が書かれていた。当初、3つの医療機関から20種類以上の薬を処方されていたためだ。
「この患者さんは、頻尿改善を期待して抗うつ剤の『アミトリプチリン塩酸塩』が処方されていた。泌尿器科で処方されることが多い薬ですが、アルツハイマー型認知症の症状を悪化させる抗コリン系作用のある薬であるため、高齢者はのまない方がいい。大病院の泌尿器科の先生ですら、高齢者に出すのは危険だと知らなかったようです。同じく腎機能が低下した高齢者には副作用が心配な酸化マグネシウムも出ているうえ、痛み止めも数種類出ています」(高瀬さん)
高瀬さんは一つひとつ必要性を吟味し、16種類の薬を減薬した。
実際に在宅や訪問診療を行っていると、同様のケースは決して珍しくないという。
「患者さんも多すぎる薬に不信感を持っていて、ご自宅に行くと、外来では『のんでいます』と言っていた薬も、のまずに隠していたりする。のんでいないから、症状がよくならず、薬の量が増えていることもある。たくさんの薬を1つずつ、今の状態を診察しながら、本当に患者さんにとって必要なのかを見直し、減薬していきます」(高瀬さん)
高瀬さんは「生活習慣の見直しや周囲のサポートによって、薬を減らせることも多い」と話す。
「認知症で糖尿病も患っている男性の患者さんが、毎日コーヒー1杯に砂糖をスプーン5、6杯も入れていました。これを低糖質の人工甘味料に置き換えることで、糖尿病の薬を減らすことに成功しました」
ほかにも日中の活動を増やして睡眠薬を減らす、家族や友人とのコミュニケーションを増やして抗うつ薬を減らすなどのケースがある。
※女性セブン2019年3月28日・4月4日号