鍵を握る二階氏(時事通信フォト)

 そればかりか、二階氏は旧民主党の細野豪志氏(衆院静岡5区)、鷲尾英一郎氏(衆院新潟2区)をスカウトして党内の批判を浴びながら、参院選ではさらに旧民主党の元議員3人を二階派から比例代表に出馬させるという野党人材を利用した派閥拡大戦略に走っている。

「政治家は当選すれば正義。二階さんは派閥の勢力拡大で幹事長留任の足場を固めながら、静岡と新潟の野党陣営の要だった細野と鷲尾を引き抜いて野党の参院選準備を混乱させようとしている」(二階派議員)

 まさに自分の立場を守るために、党内紛争の十字路で敵にも味方の自民党にも鉄砲を撃ちかけている。不気味なのは、安倍晋三首相がそんな二階氏の“ケンカ上等”に高みの見物で、事態収拾に動かないことだ。

「総理は菅官房長官の力が突出するのを警戒しており、実力者たちが互いに足を引っ張り合うのはむしろ都合がいいと考えている」(安倍側近官僚)

 そうなると対立の連鎖は参院選の先、来年の東京都知事選へと続いていく。

 都知事選は小池百合子・都知事が二階氏の「全面支援」で再選をめざしているのに対し、小池氏と五輪の主導権争いをしてきた森喜朗・元首相―麻生副総理の文教族ラインは橋本聖子氏ら対立候補を擁立する構え。そこに菅氏とパイプが太い橋下徹氏が出馬すれば、それこそ二階vs麻生vs菅の三つ巴の大混戦に発展する。

 新元号で最初の国政選挙を3か月後に控え、日本政治は安定の時代から群雄相食む時代に突入する。

※週刊ポスト2019年4月12日号

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