水着姿の檀ふみとショーケンの2ショット(1974年)
近年の作品では、NHKの『不惑のスクラム』がとてもよかった。中高年のラグビーチーム創設者にして68歳の最高齢メンバー、大手商社の元常務の宇多津(萩原)は、犯罪歴があるためにいつも下を向くメンバー丸川(高橋克典)に「焦ることないですよ」と優しく語りかける。自分は老いぼれだが、それでも自分がいたからパスがつながり、トライに結びつくこともある。誰一人として不要な人はいないと言う。この言葉で死のうとしていた丸川は救われるが、不治の病に侵されていた宇多津は世を去る。
思えば、このドラマの撮影時、萩原さんも闘病していたはずだが、背番号1番をつけて堂々とグラウンドを走っていたのである。その姿が、萩原さんご本人と被ってしまう。
あまり語られないが、「大河ドラマ」でも印象的な存在だった。個人的にシビれたのは1974年の『勝海舟』の岡田以蔵役だ。土佐の人斬り以蔵(萩原さん)は、武市半平太から勝麟太郎(海舟・松方弘樹)暗殺を命じられても、その人柄に感銘を受け、彼を守る。後に捕えられた以蔵は護送中、駆けつけた麟太郎を見ても「この人はいったいどこの人ぜよ」と罪人の自分とは無関係だと恩人を振り切るのである。以蔵の哀しみを全身から発した萩原さんには、凄みがあった。
萩原さんは、今年の大河『いだてん』にも25話から高橋是清役で出演している。最後の出演作でどんな「こだわり」を見せているのか。見届けずにはいられない。