◆35歳までにベストセラーを出せなければ死のう
──ストーリー仕立ての本書は、ひとくくりにできない多面性を持っていて、いわゆる自己啓発本やハウツー重視のビジネス本とは一線を画します。北野さんの目指されるところを教えてください。
北野:僕は経営思想家になりたいと思っています。ベンチマークにしているのは作家の村上龍さんと大前研一さん。村上龍さんは35歳(1987年)のときに『愛と幻想のファシズム』を出し、大前さんは32歳(1975年)に『企業参謀』を出した。僕も35歳までにベストセラーを出したいし、出せなければ死のう、くらい思っていました(笑)。
二人に共通するのは、国家観や歴史観に基づいた独自の思想がある点です。経営思想家というと、ドラッカーをはじめ、多くが欧米人です。彼らの思想は、日本人にはそのままは当てはまらないところがある。だから、まず、アジアの農耕民族的な歴史や文化をベースにした、かつ資本主義とクロスするような思想を構築したい。そして、その思想を元に、新しい「本物の経営者」が生まれてくれたらというのが現在の理想です。
──経営思想家になりたいと考えるようになったきかっけは何でしたか?
北野:そう考えるようになったのはここ3、4年です。様々な経営者と対談させていただくなかで、自分は、経営者としては絶対に日本一になれないと悟りました。どう考えても、孫正義さんを超えることはできない。と同時に、彼らに「適切な問いかけ」はできるかもしれないし、思想に影響を与えるようなものは作れる可能性を感じた。最近は本の執筆の仕事も増えて、これこそが自分のミッションだという思いを強めています。ビジネスパーソンが未来を作る際の「必読書」を作りたいですね。
◆北野唯我(きたの・ゆいが)
兵庫県出身。神戸大学経営学部卒。就職氷河期に博報堂へ入社し、経営企画局・経理財務局で勤務。その後、ボストンコンサルティンググループを経て、2016年、ワンキャリアに参画。執行役員として事業開発を経験し、現在同社の最高戦略責任者、子会社の代表取締役、社外IT企業の戦略顧問も兼務。著書に『転職の思考法』。
◆撮影/内海裕之