◆「秀才」が「天才」を殺さないための方法
──大企業とベンチャー企業を横断的に見ている北野さんは、いま、日本企業では世代間のバトンタッチが起きていると指摘されています。そこで起きているのは「天才型」から「秀才型」への移行だと。
北野:はい。バトンタッチのうまい会社が生き残っていく時代です。創業社長って天才型が多いと思うのですが、どこかのタイミングでバトンを渡さなければいけなくなる。で、バトンを受け取る側は秀才型が多いのです。ゆえに、秀才が組織を上手に扱えるかによって、組織の命運が決まる時代に突入します。スティーブ・ジョブズ亡き後、どうやってアップルが成長するか? と同じです。
──本書には、組織を蝕む秀才(サイレントキラー)が登場します。天才に「憧れ」と「嫉妬」を抱いている「秀才」が、自分の才能を活かしながら組織を引っ張っていくには何が必要でしょうか?
北野:大事なのは、「嫉妬」と「恐怖」を共存させないことです。嫉妬自体は、必ずしも悪いものではない。場合によっては競争心になるし、成長のモチベーションになることもあります。ただし、「嫉妬と恐怖」が共存すると、スター・ウォーズがわかりやすい例ですが、ダークサイドに落ちやすい。恐怖は不安から生まれるものですから、不安をできるだけ取り除くことが、秀才が力を発揮するためには必要です。
会社でいえば、5年後、10年後に自分の居場所がなくなるかもしれない状況だと、不安になりますよね。そういう環境で天才が現れると、自分の席が奪われるかもしれないと、秀才は天才の邪魔を始めるんです。よって、席が拡大している成長産業に身を置くことが、秀才にとっては、嫉妬をプラスの原動力に転換する一つの方法だと思います。