派遣社員である桜宮からすれば、派遣先の「ネットヒーローズ」も、その取引先の「ランダー」もクライアントである。受け取る側によっては「パワハラまがい」「セクハラまがい」となりかねない行動を、軽い気持ちでしてくるクライアントは、今すぐいなくはならない。そういう人ともうまく仕事をしていかねばならない。
断りにくいクライアントからの誘いにどう対応すべきか。仕事のモチベーション研究などを行う菊入みゆき明星大学特任教授はこうアドバイスする。
「個人ではなく、会社組織で仕事をしていることを意識しましょう。それは窮屈なこともありますが、時に大きな力となって自分を守ってくれるものでもあります。
例えば、会社のルール、規則を理由にして誘いを断ることができます。『お誘いいただき、ありがとうございます。会社の規則で、そのようなお付き合いは禁止されていまして、うかがうことができないのです』というように、誘いへのお礼を述べたうえで、断りましょう。あるいは、上司を持ち出すのも一案です。『上司とも相談しましたが、今回は失礼させていただきます』という具合です」
さらには、そもそも個別の誘いを受けないようにするために予防線を張っておくのも効果的だろう。菊入氏が続ける。
「常に複数の人とともに仕事をしていることを、折に触れて、取引先にも伝えておきましょう。『その件は、上司とも相談します』『御社との先日の取引に関して、当社内でも報告しましたが、非常に高い評価を受けました』などです。相手に、『この人には、会社組織や上司などの後ろ盾がある』と認識してもらうことが大切です。これは、『この人は会社の中の人脈をしっかり築き、社内でも認められている、できる人なのだ』という印象を形成することにもつながります。
また、断るときには、まっすぐ相手を見て、毅然とした態度で、最後の言葉まではっきりと言いましょう。過度に申し訳なさそうにしたり、語尾をあいまいにしたりしてしまうと、『本当はそう思っていないのでは?』と受け取られることもあります」
こうして上手に断っていれば、夜や休日の誘いを断っただけで仕事の依頼がなくなるといったリスクは減るはずだ。それはもちろん、仕事の実力があれば、だが。
ドラマで桜宮は「私程度の腕じゃ、デザインより人付き合いで仕事を取るしかないと思って……」と語っていた。人間関係が良好になることで、仕事が円滑に進むということは当然ある。ただし、それが異性としての魅力でのみ成り立っているときは、長続きしないだろう。