◆ジェスチャーに過ぎなかった拉致問題への協力

 トランプ政権だけでなく、ほとんどすべての米国の政権が北朝鮮に譲歩に譲歩を重ねてきたため、核兵器と大陸間弾道ミサイル(ICBM)を完成させてしまった。このような自国(米国)の安全保障上の問題にも対応できなかったのに、果たして、拉致問題を全面的な解決へと北朝鮮を動かすことができるのか疑問がある。

 拉致被害者解放へ向けて、米国が単独で北朝鮮へ強い働きかけや圧力をかけることはない。トランプ大統領が安倍首相と付き合っていくうえで協力的な姿勢を見せているに過ぎない。なにしろ、トランプ大統領は金正恩委員長を高く評価している人物である。

 金正恩委員長に対する評価は、「残虐な独裁者」というのが日本人の一般的な見方だと思うのだが、トランプ大統領の評価は180度異なっている。果たして、金正恩を誉めちぎっているような大統領を信用していいのだろうか。

 拉致被害者家族とトランプ大統領の面会は2度目となるが、安倍首相が「しっかりと拉致問題に取り組んでいる」というジェスチャーに過ぎなかったのだろうか。

 今回の首脳会談は日米同盟について「世界で最も緊密な同盟」を強調しただけで終わってしまった。非核化や拉致問題などが、日米関係が強固になったからといって解決へと進むとは思えない。

 トランプ氏は、明日は何を言い出すかわからない予測不能な人物である。そんな人物と緊密な関係になったとしても、日米共通の懸案事項である北朝鮮問題は解決しない。結局、トランプ大統領にとっては大統領選挙向け、安倍首相にとっては参議院選挙向けのための首脳会談だったと言われても仕方がない会談となってしまった。

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