◆揺れた気持ちと「潮時だな」の決意

 踏ん切りをつけたのは昨年の暮れ。免許更新のはがきが届いた時だ。

「更新がもっと先ならまだ運転していたかもしれません。私の場合はたまたま今年の2月が更新だった。そのはがきを見て、前回は高齢者講習を予約したなぁと思い出しながら、『(更新を)やめとこう』って思ったんです。安全運転できてると自信過剰になってるんじゃないかとか、もう若くないんだからなどと考えて、運転も潮時だなと返納を決意したんです」

 とはいえ、返納後の生活を想像すると気持ちは揺れた。

「その頃、講演依頼があったんです。3月分の依頼もあって、車なら50分ほどの土地なんですが、電車やバスを乗り継ぐと3時間を超える。先方には、移動が大変だからとお断りしたんですが、最寄り駅まで迎えに行きますとおっしゃっていただいたんです。都市部ならまだしも、田舎では車のない移動はひと苦労ですからね。迷惑かけるなぁという思いを感じて葛藤がありましたね。

 返納までの日々、ハンドルを握っていると、車の運転を卒業するさみしさを感じもしました。返納の数日前に車を引き取りにきてもらいましたが、10年乗って11万km超えてたのかな。よう走ってくれましたわ。きれいに洗車して、近所の仲のいい知り合い2人も一緒に見送ってくれましたわ。一緒になって『さみしいなぁ』言いながらね。そらもちろんさみしいわな…」

 そうして迎えた2月25日。最寄りの警察署へバスで向かった。

「警察署について交通課の免許証係という窓口ですぐに受け付けてくれました。娘くらいの女性警察官が担当してくださって、免許証を取り出して返納したいと告げると、書類に名前とか住所を書いてくださいと。で、自分の写真を持ってきてくれたら、手数料1000円で運転経歴証明書を発行しますよと言われたんですが、マイナンバーとか身分証明書を持ってるのでいりませんといいますとね、じゃあこれで終了ですって。あっという間に数分で終わりましたけど、最後にその警察官が『長い間お疲れさまでした』とニコッと笑って労をねぎらってくれました(笑い)」

 自宅に戻り、妻に返納したことを伝えると、

「『お疲れさまでした』ってホッとした笑顔で出迎えてくれましたわ。ずっと心配かけてたんやね」

◆運転しない生活になってからどうなった?

 以来、3か月が経過した。

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