「大きい買い物は、週末のたびに来てくれる娘が車で店まで連れて行ってくれるので助かってます。皆さんに『不便やない?』とよく聞かれますが、時間がかかる=不便やないんです。時間はいっぱいあるんでね(笑い)。それをいかに利用するかで充実した生活ができると思うんです。車だったら知り合いに会ってもプッと鳴らして通り過ぎるだけだったのが、自転車だと立ち話をする機会も増えましたしね。近所のかたから『車やめて自転車にしたん!?』と驚かれて、『うちのお父さんにも返納を勧めよう』って言われますわ(笑い)。

 車があったらいいなと思うことはありますよ。書類やパソコンと荷物が多い時は、車やったら助手席にポンとおいたらスッと行けるのに重たいなぁとかね(苦笑)。でも、まぁね、これも運動や思うたら苦にならんわな(笑い)」

 息子の新しい一面に気づくこともできた。

「外泊時は病院と自宅をドアツードアで送り迎えでしたが、返納後は片道2時間半かけてバスや電車を乗り継いでいます。息子はどうしても集中力が乏しいので、バスや電車に乗ることに心配もありましたが杞憂でした。バスや電車の乗り方、切符の買い方や改札の通り方と一つひとつ教えていきました。最初は少し手間取りましたが、私の手順を見て真似して行動してくれたんです。

 隣に座る息子を見て、息子の目には40年ぶりに乗った電車から見える景色がどう映っているのかなと考えていました。浦島太郎的な生活をしていた息子にとって、バスや電車に乗り社会とかかわることは自立の一歩で、それは親にとっても自立の一歩になったと感じています」

 そんな大畠さん夫婦、今でも車があった頃の習慣が抜けないことがあるのだという。

「うちでは洗濯物を車庫に干してるんです。車があった時は、ピーピーピーって洗濯が終わった音が鳴ると、ぼくが『車どけるわな』言うて妻が『お願いします』ってやってたんです。それがね、いまだにその音に反応してしまってね(笑い)。こないだもピーピーピーって音に思わず腰を上げて。妻に『車どけようと思ったわ』って言ったら、妻も『私もお願いしようと思ってた』って言うから、ふたりして笑いましたわ」

 免許返納は生活スタイルを大きく変えることになるかもしれない。しかし、それがイコール不便な生活にはならない、と大畠さんは教えてくれた。

※女性セブン2019年7月4日号

関連キーワード

関連記事

トピックス

全米の注目を集めたドジャース・山本由伸と、愛犬のカルロス(左/時事通信フォト、右/Instagramより)
《ハイブラ好きとのギャップ》山本由伸の母・由美さん思いな素顔…愛犬・カルロスを「シェルターで一緒に購入」 大阪時代は2人で庶民派焼肉へ…「イライラしている姿を見たことがない “純粋”な人柄とは
NEWSポストセブン
各地でクマの被害が相次いでいる
JR東日本はクマとの衝突で71件の輸送障害 保線作業員はクマ撃退スプレーを携行、出没状況を踏まえて忌避剤を散布 貨物列車と衝突すれば首都圏の生活に大きな影響出るか
NEWSポストセブン
真美子さんの帰国予定は(時事通信フォト)
《年末か来春か…大谷翔平の帰国タイミング予測》真美子さんを日本で待つ「大切な存在」、WBCで久々の帰省の可能性も 
NEWSポストセブン
(写真/イメージマート)
《全国で被害多発》クマ騒動とコロナ騒動の共通点 “新しい恐怖”にどう立ち向かえばいいのか【石原壮一郎氏が解説】
NEWSポストセブン
シェントーン寺院を訪問された天皇皇后両陛下の長女・愛子さま(2025年11月21日、撮影/横田紋子)
《ラオスご訪問で“お似合い”と絶賛の声》「すてきで何回もみちゃう」愛子さま、メンズライクなパンツスーツから一転 “定番色”ピンクの民族衣装をお召しに
NEWSポストセブン
”クマ研究の権威”である坪田敏男教授がインタビューに答えた
ことし“冬眠しないクマ”は増えるのか? 熊研究の権威・坪田敏男教授が語る“リアルなクマ分析”「エサが足りずイライラ状態になっている」
NEWSポストセブン
“ポケットイン”で話題になった劉勁松アジア局長(時事通信フォト)
“両手ポケットイン”中国外交官が「ニコニコ笑顔」で「握手のため自ら手を差し伸べた」“意外な相手”とは【日中局長会議の動画がアジアで波紋】
NEWSポストセブン
11月10日、金屏風の前で婚約会見を行った歌舞伎俳優の中村橋之助と元乃木坂46で女優の能條愛未
《中村橋之助&能條愛未が歌舞伎界で12年9か月ぶりの金屏風会見》三田寛子、藤原紀香、前田愛…一家を支える完璧で最強な“梨園の妻”たち
女性セブン
土曜プレミアムで放送される映画『テルマエ・ロマエ』
《一連の騒動の影響は?》フジテレビ特番枠『土曜プレミアム』に異変 かつての映画枠『ゴールデン洋画劇場』に回帰か、それとも苦渋の選択か 
NEWSポストセブン
インドネシア人のレインハルト・シナガ受刑者(グレーター・マンチェスター警察HPより)
「2年間で136人の被害者」「犯行中の映像が3TB押収」イギリス史上最悪の“レイプ犯”、 地獄の刑務所生活で暴力に遭い「本国送還」求める【殺人以外で異例の“終身刑”】
NEWSポストセブン
“マエケン”こと前田健太投手(Instagramより)
“関東球団は諦めた”去就が注目される前田健太投手が“心変わり”か…元女子アナ妻との「家族愛」と「活躍の機会」の狭間で
NEWSポストセブン
ラオスを公式訪問されている天皇皇后両陛下の長女・愛子さまラオス訪問(2025年11月18日、撮影/横田紋子)
《何もかもが美しく素晴らしい》愛子さま、ラオスでの晩餐会で魅せた着物姿に上がる絶賛の声 「菊」「橘」など縁起の良い柄で示された“親善”のお気持ち
NEWSポストセブン