ビジネス

「新幹線のお医者さん」ドクターイエロー引退説を追う

ドクターイエロー(新幹線電気軌道総合試験車)内部に設置された「観測ドーム」(時事通信フォト)

ドクターイエロー(新幹線電気軌道総合試験車)内部に設置された「観測ドーム」(時事通信フォト)

 ドクターイエローはディープな鉄道ファンのみならず、鉄道に詳しくない一般乗客からも人気があり、特にチビっ子たちの間では絶大な人気を誇る。

「ドクターイエローを見たい!」と駄々をこねるチビ鉄を、ママがなだめる。そんな光景は珍しくない。

 ドクターイエローが引退するかもしれないという噂が流れるのは、現在のドクターイエローが700をベースにしていることが理由だ。新型車両N700Sの導入が現実的になったいま、旧型車両が引退するときは当然、やってくる。

 旧型車両をベースにしていることが引退の理由だったら、新型車両のN700Sベースにしたドクターイエローを新たに製造すれば済む話。しかし、最近は検測技術や機器のコンパクト化が進み、検測専用車両そのものが必要なくなっている。

 実際、博多駅―鹿児島中央駅間で新幹線を運行するJR九州は、ドクターイエローに相当する検測専用車両を保有していない。JR九州は、通常の新幹線に機器を持ち込んで検測している。

 専用車両でなくても、検測は十分に可能。そのため、わざわざ専用車両を保有する必要はない。専用車両を保有すれば、それだけ不経済になる。そうした事情が、ドクターイエロー引退説を根強くさせる。

 ドクターイエローの去就は、これまでにもたびたび鉄道専門誌などで取り上げられてきた。2018年の株主総会でも、株主から「ドクターイエローの引退について」質問が出ている。その際、JR東海側は「2020年度も運行を続ける」と説明していた。

 今回のN700S速度向上試験の報道公開後のカコミ取材で、ドクターイエロー引退説に関しては「現段階では決まっていない」(上野雅之副本部長)との回答にとどまった。

 些細な違いではあるが、株主総会時の「運行を続ける」という説明と、今回のカコミ取材における「現段階では決まっていない」という説明では、明らかに受ける印象は異なる。

 ドクターイエローの今後はどうなるのか? 必要なしと判断されて引退するのか、サプライズとして新型のドクターイエローが登場するのか? 絶大な人気を誇る車両だけに、鉄道ファンならずとも気になるところだ。

JR有楽町駅付近を通過する東海道・山陽新幹線の923形新幹線電気軌道総合試験車T5編成。通称「ドクターイエロー」(時事通信フォト)

JR有楽町駅付近を通過する東海道・山陽新幹線の923形新幹線電気軌道総合試験車T5編成。通称「ドクターイエロー」(時事通信フォト)

関連キーワード

関連記事

トピックス

NHK中川安奈アナウンサー(本人のインスタグラムより)
《広島局に突如登場》“けしからんインスタ”の中川安奈アナ、写真投稿に異変 社員からは「どうしたの?」の声
NEWSポストセブン
カラオケ大会を開催した中条きよし・維新参院議員
中条きよし・維新参院議員 芸能活動引退のはずが「カラオケ大会」で“おひねり営業”の現場
NEWSポストセブン
コーチェラの出演を終え、「すごく刺激なりました。最高でした!」とコメントした平野
コーチェラ出演のNumber_i、現地音楽関係者は驚きの称賛で「世界進出は思ったより早く進む」の声 ロスの空港では大勢のファンに神対応も
女性セブン
文房具店「Paper Plant」内で取材を受けてくれたフリーディアさん
《タレント・元こずえ鈴が華麗なる転身》LA在住「ドジャー・スタジアム」近隣でショップ経営「大谷選手の入団後はお客さんがたくさん来るようになりました」
NEWSポストセブン
元通訳の水谷氏には追起訴の可能性も出てきた
【明らかになった水原一平容疑者の手口】大谷翔平の口座を第三者の目が及ばないように工作か 仲介した仕事でのピンハネ疑惑も
女性セブン
襲撃翌日には、大分で参院補選の応援演説に立った(時事通信フォト)
「犯人は黙秘」「動機は不明」の岸田首相襲撃テロから1年 各県警に「専門部署」新設、警備強化で「選挙演説のスキ」は埋められるのか
NEWSポストセブン
歌う中森明菜
《独占告白》中森明菜と“36年絶縁”の実兄が語る「家族断絶」とエール、「いまこそ伝えたいことが山ほどある」
女性セブン
大谷翔平と妻の真美子さん(時事通信フォト、ドジャースのインスタグラムより)
《真美子さんの献身》大谷翔平が進めていた「水原離れ」 描いていた“新生活”と変化したファッションセンス
NEWSポストセブン
羽生結弦の元妻・末延麻裕子がテレビ出演
《離婚後初めて》羽生結弦の元妻・末延麻裕子さんがTV生出演 饒舌なトークを披露も唯一口を閉ざした話題
女性セブン
古手川祐子
《独占》事実上の“引退状態”にある古手川祐子、娘が語る“意外な今”「気力も体力も衰えてしまったみたいで…」
女性セブン
ドジャース・大谷翔平選手、元通訳の水原一平容疑者
《真美子さんを守る》水原一平氏の“最後の悪あがき”を拒否した大谷翔平 直前に見せていた「ホテルでの覚悟溢れる行動」
NEWSポストセブン
5月31日付でJTマーヴェラスから退部となった吉原知子監督(時事通信フォト)
《女子バレー元日本代表主将が電撃退部の真相》「Vリーグ優勝5回」の功労者が「監督クビ」の背景と今後の去就
NEWSポストセブン