例えば、#KuTooという活動が禁止を求めている、職場での女性に対するパンプスやヒールの強制。これまで当然のように受け入れられてきた不文律であったことを考えると、必ずしも強制する側に悪意があるとは思わない。しかし、不文律を押しつけられることに違和感を覚える人の声が増え、予定調和が崩れてきた。仮に悪意がなかったとしても、苦痛の強制はパワハラだ。

 2年ほど前には、ベテランお笑いコンビがテレビで男性同性愛者風のキャラクターをネタにして批判を浴びた。過去に人気を博したキャラクターであっても、価値観の多様化が進む社会では受け止められ方が変わってしまう象徴的な出来事だ。

 そんな予定調和のひずみを受け入れられない人は、生きづらい世の中になってしまったと嘆く。しかしその陰に、これまでの予定調和の中でずっと生きづらい思いをし続けてきた人たちがいることを認識する必要がある。

 テレビのバラエティー番組では、よくイジるという言葉が使われる。一見ハラスメントのように見える言動が視聴者にウケることで、イジられた本人もオイシイと感じる。そこにイジる側の悪意はなく、イジられる側も注目を浴びながら笑いをとれるので、むしろイジってくれた相手に感謝しているように感じる。

 それらのやり取りは、お約束と言われる予定調和なのだが、予定調和の前提となる常識感が視聴者との間でズレてしまうと、途端に笑えなくなってしまう。その微妙な変化や空気を嗅ぎ分けて、常に笑いを提供し続けるというのは、本当に大変なことだと思う。

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