「朴槿恵政権時代に元徴用工裁判の進捗を意図的に遅らせたとして大法院(最高裁)判事が逮捕・起訴されましたが、文在寅はその後釜として、春川(チュンチョン)という小さな地裁の所長をいきなり大法院長(最高裁長官)に大抜擢している。この人は文大統領の友人で、左派の活動家だった。最高検総長には、お気に入りのソウル中央地検所長を最近三段跳びでいきなり大抜擢している。
韓国の司法組織は、かつての日本の中央官庁と同じで、誰かが出世するとその同期や上の人たちは退職するのが慣例で、こんな“左派お友達人事”のせいで相当たくさんの人が退職に追い込まれる。大法院判事を逮捕したというのも尋常ではなく、韓国司法界の保守派の間には大統領に対する不満が鬱積しています。
文在寅政権は今、学生運動出身の左派で元ソウル大教授のチョ・グク大統領民情首席秘書官を法務部部長(法務相)に起用する人事を進めていて、これが実現すると、法務省、裁判所、検察庁のトップがすべて左派でしめられることになります。だから、司法界の穏健保守派ラインが示し合わせて、教科書無断修正事件を利用し、この人事を阻止しようと考えたとしても不思議ではありません」(前川氏)
文在寅大統領の“独裁”体制に、司法界から亀裂が入り始めているのかもしれない。
●取材・文/清水典之(フリーライター)