元朝日新聞の韓国特派員記者で、ジャーナリストの前川惠司氏はこういう。
「韓国では、政権が変わるたびに教科書の記述もころころ変わるので、時の政権が圧力をかけているというのは十分予想できたこと。それ自体は驚くに値しません。
それよりも、この朝鮮日報の記事には、司法の現場で何が起きているかが浮き彫りになっていて、むしろそこに注目すべきです」
確かに、“政権の意向を受けて不正を働いた”韓国教育部の官僚が検察に起訴されたという事件の構図には、違和感を覚える。徴用工判決でも明らかなように、韓国では行政はもちろん司法も政権に忖度してきた経緯があるからだ。
「朝鮮日報は保守派の新聞で、文在寅政権に非常に批判的であり、この記事は同紙のスクープです。つまり、検察は課長と研究士を起訴したうえで朝鮮日報にリークしたのでしょう。
この記事の最後には、上層部の指示・関与については調査せずに捜査を終結したとし、野党議員の〈上層部の関与の有無を調査しなければならない〉というコメントを載せています。韓国教育部の上層部まで捜査の幅を広げると、政権サイドにバレてつぶされるから、捜査を末端の官僚に留め、騒ぎを大きくしたうえで、上層部の関与についての調査は国会に持ち込もうとしているのです。
現場の検察官が政権に忖度することなく独自の判断で捜査・起訴を進めたわけで、これは検察の文政権に対する反乱と呼んでもいいでしょう」(前川氏)
元新聞記者の視点でこの記事を読み解くと、そんな背景が浮かび上がってくるのだ。しかし、韓国の司法はなぜ文政権に反旗を翻そうとしているのか。