ビジネス

億万長者が続々の「eスポーツ」 プロゲーマー育成の難しさ

年収10億円超と言われるプロゲーマー「Ninja」(AFP=時事)

年収10億円超と言われるプロゲーマー「Ninja」(AFP=時事)

 バスケットボールのNBAドラフト一巡名に指名された八村塁がいきなり4億円年俸を得られることで話題になったが、「eスポーツ」の世界もいま続々と億単位のプレイヤーを生み出している。米Time誌が選出する「世界で最も影響力のある100人」にトランプ大統領などとともに選ばれたゲーム『Fortnite(フォートナイト)』プレイヤーNinjaは10億円超の年収と報じられ、『Dota 2』(ドータ・ツー)プレイヤーのトップに君臨するドイツの26歳KuroKyは賞金だけで4億円超を稼いでいる。ジャーナリストの西田宗千佳氏が、ゲームの競技会がスポーツへと発展し多くの称賛と賞金が集まるなか、課題もある現状について解説する。

 * * *
 ここ数年で、ゲームが「eスポーツ」として紹介されることが増えてきた。オリンピック競技に含める、という話は頓挫したが、eスポーツという言葉への注目は高まる一方だ。

 だが、ゲームに「スポーツ」という言葉を 使うことについて、違和感を訴える人は少なくない。画面に向かってコントローラーを操作する姿は、確かに一般的なスポーツのイメージとは異なっている部分がある。

 しかし、筆者はそれでも「eスポーツはスポーツと名乗るに足る条件を備えている」と考えている。一方で、多くのスポーツとは異なる部分が厳然と存在するのも事実である。eスポーツはなぜ「スポーツ」と呼ばれるようになったのか? その点を解説してみたい。

■巨額の賞金が動く「プロ競技」が成長

 eスポーツ・トッププロの賞金が数億円、というニュースを見たことはないだろうか。日本では法的な問題があって高額賞金を伴ったイベントは開催しづらい状況にあるが、海外ではそうではない。世界最大級の格闘ゲームに関する大会のひとつ、カプコンカップ2018年度世界大会は、賞金総額が40万ドル(約4400万円)、優勝賞金25万ドル(約2750万円)。Epic Gamesが開催する「Fortnite World Cup」の賞金総額は1億ドル(約110億円)、優勝賞金3000万ドル(約33億円)という巨大イベントになっている。

 それだけのイベントに勝つ可能性のある有力プレイヤーは、当然それだけ注目されるので、広告媒体としての価値も認められている。パソコンやヘッドホンなどのメーカー、エナジードリンクブランドなどと提携し、広告費を得ている。

 ゲーム大会の賞金と広告費で生計を立てる人々を、一般に「プロゲーマー」という。ちょっとゲームが上手ければなれる、というものではない。長時間にわたる修練と恵まれた能力があって、ようやく成功できる狭き門である。彼らのゲームに対する姿勢はアスリートそのものであり、ゲームを知らない人が考える「ちょっとゲームが上手い人」というレベルからはかけ離れた存在だ。まさに、他のスポーツのプロと同じである。

 プロがいて大きな額のお金が動く様がプロスポーツの世界に似ているため、勝ち負けのあるゲームの世界を「eスポーツ」と呼ぶようになった……。簡単にいえば、そういう図式である。

■本質は「ゲームプレイを見て楽しむ」人の増加にあり

 ただし、確かにプロがいることがeスポーツの世界を広げたことは事実である。一方で、なぜ巨額のイベントが成立するようになったのか、その点を考えておく必要がある。

 大きな転機となったのは、YouTubeに代表される「ネット動画」の登場だ。

 ゲームの大会やイベントは30年以上前から存在した。ゲームの販売促進を兼ねて、得点を競う競技会や対戦イベントはさほど珍しくない。だが、そうした存在はあくまで「イベントごと」にすぎなかった。参加するのはゲームをプレイしているファンがほとんどだったからだ。

関連キーワード

関連記事

トピックス

2025年11月には初めての外国公式訪問でラオスに足を運ばれた(JMPA)
《2026年大予測》国内外から高まる「愛子天皇待望論」、女系天皇反対派の急先鋒だった高市首相も実現に向けて「含み」
女性セブン
夫によるサイバーストーキング行為に支配されていた生活を送っていたミカ・ミラーさん(遺族による追悼サイトより)
〈30歳の妻の何も着ていない写真をバラ撒き…〉46歳牧師が「妻へのストーキング行為」で立件 逃げ場のない監視生活の絶望、夫は起訴され裁判へ【米サウスカロライナ】
NEWSポストセブン
東条英機・陸軍大将(時事通信フォト)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最低の軍人」ランキング ワースト1位はインパール作戦を強行した牟田口廉也・陸軍中将 東条英機・陸軍大将が2位に
週刊ポスト
昭和館を訪問された天皇皇后両陛下と長女・愛子さま(2025年12月21日、撮影/JMPA)
天皇ご一家が戦後80年写真展へ 哀悼のお気持ちが伝わるグレーのリンクコーデ 愛子さまのジャケット着回しに「参考になる」の声も
NEWSポストセブン
訃報が報じられた、“ジャンボ尾崎”こと尾崎将司さん(時事通信フォト)
《ジャンボ尾崎さん死去》伝説の“習志野ホワイトハウス豪邸”にランボルギーニ、名刀18振り、“ゴルフ界のスター”が貫いた規格外の美学
NEWSポストセブン
西東京の「親子4人死亡事件」に新展開が──(時事通信フォト)
《西東京市・親子4人心中》「奥さんは茶髪っぽい方で、美人なお母さん」「12月から配達が止まっていた」母親名義マンションのクローゼットから別の遺体……ナゾ深まる“だんらん家族”を襲った悲劇
NEWSポストセブン
シーズンオフを家族で過ごしている大谷翔平(左・時事通信フォト)
《お揃いのグラサンコーデ》大谷翔平と真美子さんがハワイで“ペアルックファミリーデート”、目撃者がSNS投稿「コーヒーを買ってたら…」
NEWSポストセブン
愛子さまのドレスアップ姿が話題に(共同通信社)
《天皇家のクリスマスコーデ》愛子さまがバレエ鑑賞で“圧巻のドレスアップ姿”披露、赤色のリンクコーデに表れた「ご家族のあたたかな絆」
NEWSポストセブン
12月中旬にSNSで拡散された、秋篠宮さまのお姿を捉えた動画が波紋を広げている(時事通信フォト)
〈タバコに似ているとの声〉宮内庁が加湿器と回答したのに…秋篠宮さま“車内モクモク”騒動に相次ぐ指摘 ご一家で「体調不良」続いて“厳重な対策”か
硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将(写真/AFLO)
《戦後80年特別企画》軍事・歴史のプロ16人が評価した旧日本軍「最高の軍人」ランキング 1位に選出されたのは硫黄島守備隊指揮官の栗林忠道・陸軍大将
週刊ポスト
死体遺棄・損壊の容疑がかかっている小原麗容疑者(店舗ホームページより。現在は削除済み)
「人形かと思ったら赤ちゃんだった」地雷系メイクの“嬢” 小原麗容疑者が乳児遺体を切断し冷凍庫へ…6か月以上も犯行がバレなかったわけ 《錦糸町・乳児遺棄事件》
NEWSポストセブン
ネックレスを着けた大谷がハワイの不動産関係者の投稿に(共同通信)
《ハワイでネックレスを合わせて》大谷翔平の“垢抜け”は「真美子さんとの出会い」以降に…オフシーズンに目撃された「さりげないオシャレ」
NEWSポストセブン